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ほとんどの奴が読み方を間違えてるナマポ法律学【生活保護】 

今回は「生活保護受給者」に特化した法律講座をやりたいと思います。

内容としましては「初心者にでもわかる」ではなくて、

徹底的に一人一人が、条文読めるように、生活保護のプロになるように、養成していこうという記事内容になっております。

この記事は、ところどころ面倒になっている箇所がありますが、

一番大事なのは、最初の「法律の原則」の項目、これを読めば大分法律が読みやすくなると思います。

というか、「法律の原則」が非常に重要で、これを知っていないと生活保護法の条文の使い方がさっぱりわからなくなります。

これは、難しいことではなく、シンプルなリーガルマインドです。

このリーガルマインドを使って、

頭の悪い言葉使うと、役所・ケースワーカーを「論破」し、適切にな所にクレーム、クレームの方法も含めてやっていきたいと思います。

法律の原則

まず抑えておかなけれならない、すべての法律の肝となる大原則があります。

「個人の権利は最大限尊重されるべきものであり、各個人は他者の権利を害さない限りいかなるこをも行う自由を有する」

人類の長い歴史の中で勝ち取った近代法の大原則となります。

「六法」は明治になって近代化を進める上でフランスやドイツの法律を元に作られたもので、この大原則も長いヨーロッパの歴史の中でかちとったものといえます。

日本の場合はヨーロッパと違い、革命などを経て「個人の権利」を獲得したわけではなく、戦後憲法によって「最大限尊重すべき個人の権利」というものが定められたため、国民の意識がすぐに変わったわけではないことは想像に難くないと思います。

法律家というのは、「六法全書」をすべて暗記している人というわけではなく、法律の基本的な読み方をマスターしているのであって、一度も目にしたことがない法律でも、条文を探し、条文を解釈することによって、未知の領域の相談に対しても的確な回答ができるようにトレーニングされている人です。

六法(憲法民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法)は「法律の基本法」と呼ばれ、法律関係に限らず様々な資格試験で、最低でも一つや二つ必須科目に指定されます。

また、実体法(権利の義務の発生・変更・消滅など、その法律関係の実質的内容を定めた法律)と手続法(その実質的な内容を具体的に実現するための法的手続きを定めた法)にわけられます。

六法だと、憲法民法、刑法、商法は実体法で、民事訴訟法、刑事訴訟法は手続法に当たります。

「六法」で一番利用価値があるのは、実は松尾の方にある「事項牽引」です。

分からない用語が出てきた時は、「事項牽引」で調べた条文に一つ一つ当たって条文を読み、その条文に判例の要約が付いていればそれを読み、こうしてほとんどの場合なんとかなります。

条文を読むときの心構え

人は一人では生きていくことができず、そのため、必然的に集団生活を営むことになります。しかし、集団生活では様々な争いが発生します。

集団の構成員の人格いかんの問題ではなく、たとえ集団の構成員全員が高潔であったとしても、衣食住を行うにあたって必要なものに限りがある以上、人と人との利害はぶつかり合います。

しかし、争いは起こるものだとあきらめて放置していればその社会は最終的には崩壊してしまいかねません。そこで、集団内の秩序を規律し、正しく公平な運営を図るために生まれたのが「法」です。

つまり、法の目的とは、正義と公平の実現にあります。

法の精神とは、一言で言えば、正義です。

それゆえ、法とは何かという問いは、正義とは何か、という問いに置き換えられます。

芸術は『美』を探求する、科学は『真理』を探究する、という例にたとえるなら、法学は『正義』を探求するということになるでしょう。だから、法を学ぶものは、正義を求め、『正義』を実現する精神を身につけなければなりません(『法とは何か』から引用)。

この法の目的を踏まえて考えると正義と公平の実現にかなった解釈をすべきということになります。

リーガルマインドは、たくさんの法律や条文を通じてみにつく正義と公平のストライクゾーンの感覚です。

それぞれの法律が実現しようとしている価値は違いますが、どの価値も社会の正義や公平を図ろうとするものには変わりがありません。

そのため、多くの法律や条文について、法律が実現しようとする勝ちを学ぶことで、共通する正義や公平の感覚を学ぶことができますし、正義や公平の広がりに触れることができます。

法律には

そそれぞれに実現しようとする価値があり、その価値をどこで見抜くことができるかというと「目的規定」です。

生活保護法を読むうえで最重要項目「比例原則」

公平を目指す際に、二つの価値が対立します。

条文に現れない、「対立する利益の調整」が発生します。

たとえば、公道で自動車を運転する時には免許が必要です。

「何のための免許なの?」と尋ねられたら、「交通安全のため」と答えることでしょう。

道路交通法が実現しようとする価値は「交通の安全と円滑」と「交通に起因する障害の防止」というのですから、スムーズで安全な交通実現とでも言えるでしょうか。

そのためには道路における一定のルールが必要です。

しかし、免許制度はこれを引き換えに「誰もが自動車を運転することのできる自由」を奪っています。

自動車免許制度が現在続いているのは、子の自由よりも「交通の安全と円滑」が勝っていると判断されています。

このように国や自治体が、ルールによって人々の権利を制限したり、義務を課すことがあります。

もちろん、そうしたルールは法律や条例で定めなければなりませんが、法律や条例で定めたからといって、国民が受け入れてくれるものでもありません。

では、どのようなときに「なるほど必要だ」と思ってもらえるかはなかなか難しいのですが、少なくても、そうした義務を課すことなどのメリットがデメリットを上回るものでなければなりません。

「トータルで考えればやった方がいい」そう判断されて初めてみんなが受け入れてくれる(我慢してくれる)ものです。

もし、トータルではデメリットが上回る場合には「仕切り直し」です。

義務付けなどを諦めるか、もっとデメリットの少ない方法を選び直すしかありません。

法令の規制処置が受け入れるためには「なるほど必要だ」と思ってもらわなければなりません。

その場合の大きなポイントは、義務付けなどの手段が目的にふさわしいものであるかどうかにあります。

ネギを切るためにナタを持ち出しては誰もが「やりすぎ」と感じることでしょう。

ネギを切るならやはり包丁に限ります。

同じように、規制手段も目的に比例したふさわしいものを選ばなければならないのです。

こうした手段と目的との関係を「比例原則」といいます。

権利を制限しようとする法律では、規制手段と目的とのバランスとして「比例原則」が重要となります。

生活保護法を読む時にぶつかるのが第27条と第62条でしょう。

(指導及び指示)
第二十七条保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。
2前項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。
3第一項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。

(指示等に従う義務)
第六十二条被保護者は、保護の実施機関が、第三十条第一項ただし書の規定により、被保護者を救護施設、更生施設、日常生活支援住居施設若しくはその他の適当な施設に入所させ、若しくはこれらの施設に入所を委託し、若しくは私人の家庭に養護を委託して保護を行うことを決定したとき、又は第二十七条の規定により、被保護者に対し、必要な指導又は指示をしたときは、これに従わなければならない。
2保護施設を利用する被保護者は、第四十六条の規定により定められたその保護施設の管理規程に従わなければならない。
3保護の実施機関は、被保護者が前二項の規定による義務に違反したときは、保護の変更、停止又は廃止をすることができる。
4保護の実施機関は、前項の規定により保護の変更、停止又は廃止の処分をする場合には、当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合においては、あらかじめ、当該処分をしようとする理由、弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。
5第三項の規定による処分については、行政手続法第三章(第十二条及び第十四条を除く。)の規定は、適用しない。

第27条に最低限度の指導指示をすることができて、それは保護者の同意が必要

第62条保護者は指導指示に従わなければらず、従わない場合は福祉事務所側は保護停止廃止にできる

これは、どう解釈すればいいの?という話になります。

生活保護法違反による訴訟でよくあるパターンです。

これも「比例原則」で考えるという発想があるとわかりやすくなるでしょう。

「指導指示に従わないこと」と「保護停止廃止」を天秤にかけます。

保護停止廃止というのは、受給者は生活できません。受給者の「生存権」に関わる重大な行為です。

受給者の指導指示に従わないことが、保護停止廃止に値するほど重大なことなのかを検討しなければんりません。

保護停止廃止というのは慎重に口頭→文書→弁明の機会→さらに保護停止廃止にしても受給者は生活に影響がないか会議をします。

これは要するに、実質、指導指示に従わないからと保護停止廃止にしたら、何かしら違法行為に引っかかります。

法律に勿論なケースワーカーが指導指示に従わないからといって保護停止を強行するといった場合、比例原則に則ると生存権を奪う行為は、福祉事務所側の裁量権の逸脱という判断になるわけです。

このように、比例原則は法律の基本的な原則なのですが、条文だけ読む馬鹿で悪質な福祉事務所は「28条を根拠に~、62条を根拠に~保護停止にできるから停止する!」と言い出して保護廃止を強行するわけです。

勿論、裁判になったら違法行為としてアウトになり、このような判例ばっかりでございます。

クレームを文書送る時にも「比例原則」にともなっていないというのはかなり使いやすいワードとなります。

行政は形式的平等しかみていない

国・自治体と国民との関係は、基本的に一方的です。

国民の側の事情は様々でしょうが、個別の事情にとらわれすぎると行政はすすみません。

そのため、一定の基準を満たしていれば許可を与えますし、一定の所得があればそれに応じた税率の所得税を課します。

しかし福祉事務所というのは法律に則らず、役所の慣行や厚生労働省の通知によって行います。

これは何故かというと、朝日訴訟と堀木訴訟で説明するのですが、福祉事務所は「通知」行政といわれており、法律遵守を目指す福祉事務所はその場所によって大きく分かれます。

法律の構造

法律の構造は料理と同じです。

順番に「総則」「実体的規定」「雑則(補則)」「附則」

という構成です。「総則」は前菜のようなもので、法律全体に共通することが規定されます。その法律の目的やその法律で使われる言葉の定義が規定されます。

実体的規定がメインディッシュです。規則法なら禁止規定や許可制度に関する規定が置かれますし、助成法なら補助の対象や金額などに関する規定が並びます。

第1条に「目的規定」が置かれます。

1条さえ読めばだいたいその法律の内容が分かるようになっています。

この法律で実現しようとする直接的な目的ばかりでなく、その目的を果たすことで社会にどのような影響を与えることができるのかさえ規定しています。

1条は条文を読むための目次のような役割さえ果たしてくれます。特に、目次のない法律では1条が力を発揮します。

「附則」は、新しい制度が定着すればいらなくなるような規定が置かれます。

古い制度から新しい制度へスムーズに乗り換えるための措置を「経過措置」といい法律で経過措置は「附則」という場所に置かれるわけです。

条文の構造・法令用語

「等」

ビジネス上の文章でもやたら「等」を入れたがる人がいます。

何か想定外のことが起こった時の「アローワンス」のつもりで「等」を入れるのでしょうが、法律の世界ではそんな「なんとなく安心」は通用しません。

「何が当てはまるかを想定した上で『等』を使う」こうしたルールが徹底しているのが法律です。

法律の条文で『等』を使う場合、必ず「等」とは「〇〇」と「××」と「△△」です、と具体的に列挙できなければなりません。

法律を運用する時に、なんでもかんでも「等」に含められてしまっては大変だからです。

「等」はその前にあるものが代表的なものであることを示したうえで、「別にもある」ということを読み手にに意識させるために使います。

つまり、「一番伝えたいことを最初に言う」ということと、「正確にいう」ことを両立させるために使われています。

文末表現

文末表現だけでもパターンがあります

・~する、~しない

「そのような建前・ルールにした」ことを伝える意味となります。

・~することができる、~することができない

能力・権限があるとか、ないとかを示す場合に使われます。

このとき、権限が与えられたものが公的機関である場合は注意が必要です。

公的機関の場合は、あくまでも与えられた権限を公正に行使しなければなりません。

同じ条件でAさんにだけ行ってBさんに行わないということをしてはいけないわけです。

その意味では「~しなければならない」という意味に近いです。

・~するように努めなければならない

「~しなければならない」「~してはならない」といいたいけど、

「現実的にはそこまでは難しい」というような場合に使われる言葉です。

これは「努力義務規定」と呼ばれています。

所詮、努力義務ですから、これに反したとしてもペナルティを科すことはできません。

日常で使う言葉でいうと「~できるだけしなければならない」という意味です。

・~しなければならない、~してはいけない

ストレートな義務規定です。破った場合は罰金、過料などの罰則が規定されています。

しかし、法律の中にも、義務付け規定をおきながら、ペナルティに関する規定がないものもあります。

「ペナルティがないのなら、努力義務規定でも良かったじゃないの?」と思うかもしれませんが、そこは「気持ち」の問題ということになります

・~するものとする、~しないものとする

基本としては「~する」と表現してもいいことなのですが、

「重々しさを出したい」場合に使われます。

「準用」

「適用する」というのは、条文を本来の対象に当てはめることをいいます。

一方、「準用する」という表現は、よく法令で使われますが、繰り返しを避けるという意味でとてもすぐれています。準用は「似た対象」への当てはめです。

民法でもたくさん使われます。

「又は」「若しくは」「及び」「並びに」

「又は」「若しくは」は英語で言えばどちらも「or」です。

「AかBか」という単純に選択肢を示す場合には「A又はB」というように使います。

ところが選択的な接続詞が2段階以上になる場合があります。

こうした場合に登場するのが「若しくは」です。

「又は」で大きく分かれることが重要です。

「及び」「並びに」は「and」ですが違う点がひとつあります。

「又は」は一番大きなグループ同士でつなぐのに対して「及び」は一番小さなグループ同士をつなぐ場合に使われます。ちょっとややこしいかもしれません。

「その他」と「その他の」

「その他の」の場合は「その他の」の前にある語が「その他の」のあとにある語の「例示」に当たります。

「その他」の場合には「その他」の前の語と「その他」のあとの語は「並列」の関係にあります。

「場合」と「とき」

法令で使う時はちょっとした特殊ルールがあります。

それは家庭的な条件が2つ重なる場合の使い方です。

たとえば「風邪を引いて38℃以上の熱があるときは」という文章があったとします。

この文章は家庭的条件の「とき」を使って一つにまとめていますが、よく考えてみると本当はその条件は2つあるはずです。

丁寧にいうと「風邪をひいた時であって、しかも、38℃以上の熱があるときは」となるからです。

2つの条件があるということは、アンパンマンがよくいう「顔が濡れて力が出ない」というセリフと比べてみるとよく分かります。

パンの顔を持つアンパンマンは、顔が濡れると「必ず」力が出なくなります。

ですから「顔が濡れた時であって、力が出なくなってしまったときは」と表現することはふさわしくないのです。

これに対して「風邪を引いて38℃以上の熱がある時は」2つの仮定的条件が重なった者をいうことができます。

「風邪をひいいたとき」であっても、必ずしも「38度以上の熱がある」とは限らないからです。

ある条文が働きだすときの条件のことを「要件」といいます。

そのため、どんな要件が必要なのか、その要件どうしがどんな関係にあるのかということは条文を読むうえで、とても大切になります。

そのため、法令では2つの仮定的な条件が重なった場合には「場合において、~ときは」と条件が2つあることと、そして条件の大小関係を明らかにする法令用語のルールを定めたのです。

「場合」を2回使ったり、「とき」を2回使えば表現できなくもありませんが、それでは条件の大小関係はわかりにくいので、大きな条件には「場合」を、小さな条件には「とき」を使って、2つの仮定的な条件が重なった状態であることを表現しています。

「~から」「~から起算して」

ややこしいですが期日の「~から」は初日を含みません。これを「初日不算入の原則」といいます。

これは義務を負う人に不利にならないようにする民法の公平さが導いた原則です。

初日を含む場合は「~から起算して」という表現を使います。

「解釈する」ということ

実際読んでみるとわかるのですが、法令の規定は、ある程度抽象的に書かれています。

規定がズバリと書かれていればいいのですが、抽象的な部分が残る場合には現実の対象に当てはめる(これを「適用する」といいます)際に、その規定の意味を「解釈」する必要が生じます。

また、法令が新たな現象や時代に対応するようになるため制定から時間がたてば、当初は想定していなかった事柄が生じます。

そのため、法令は、新しい事柄もある程度「解釈で受け止められるよう」抽象化しています。

最終的な解釈権者は「裁判所」となります。

なので、判例こそ最終回答となります。

だから、判例が重要なのです。

しかし、「解釈できるのは裁判所だけか」といえばそうではありません。

たとえば行政も可能です。

行政は自ら法令を運用しているので、一定の解釈を行わないと仕事になりません。

行政の解釈を最終的な解釈ではないという意味も込めて「行政解釈」といいます。

行政解釈は「通達」などの形で出されることが多くあります。

「通達」というのは、上司である行政機関が部下である行政機関に出す命令などをいいます。

解釈する者や立場がどうであろうと、法律の条文を読み解くことはどれも「解釈」することになります。

続いて、解釈の種類も説明します。

文理解釈::これはその条文を文字通り解釈する方法です。

論理解釈:文理解釈では読み切れないとなると、今度は論理解釈に進みます。

論理解釈は外国語を翻訳する時の「意訳」みたいなものです。

意訳とは、そのまま機械的に翻訳するとヘンテコな日本語になってしまう場合に意味を補ったりしてしっくりなじむ表現にするものです。

論理解釈には「拡張解釈」「縮小解釈」「変更解釈」「反対解釈」「類推解釈」「もちろん解釈」と様々な解釈があります。

どの解釈方法をとるかは、「センス」の部分の話となりそれには経験を積むしかありません。

このブログの法律の解釈も、ワイがやってるので「ワイ解釈」と名付けていいかもしれません。

ただ実務における解釈は、妥当な結論と思われることと条文の規定とをつなぐことが「解釈」といえます。

条文が発する「シグナル」を感じ取っていきましょう。

最高法規憲法

どの法律の中でも一番優先されるものは「憲法」です。

憲法は法律が守ろうとする利益が公益(社会・公共のための利益)であるため公法となります。

公法とは、国家・地方公共団体と個人の関係や国家同士の関係、国家と地方公共団体との関係、地方公共団体同士の関係、国家若しくは地方公共団体の組織・活動を定める法をいいます。

憲法98条には、次のように定められています。

第九十八条この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

民法や刑法、生活保護法、行政法など、他の法律が束になってかかっても、憲法に反すれば、ひとひねりでその効力は否定されるわけです。

これを「憲法最高法規性」というものです。

日本国憲法前文抜粋

そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

人権ととは人間が人として当然にもつ(=固有性)、公権力によって侵されない(=不可侵性)権利です。

そして、人種・性別・身分・職業・国籍に無関係に共有(=普遍性)されます。

第十条日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
第十一条国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

憲法に沿って「生活保護法」が作られているわけですね。

ただし、制約があります。

十三条すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

この場合の「公共の福祉」というのを「他者の権利」と考えれば、個人の権利は最大限尊重されるべきものであり、各個人は他者の権利を害しない限りいかなることをも行う自由を有するということになります。

基本的人権を「公共の福祉」によって制約することができると定めました。

人権は、他人の人権との関係によって制約を受けるという意味です。

人権の制限に関する考え方は3通りあります

1一元的内在制約説:公共の福祉とは人権同士の矛盾・衝突を調整する実質的公平の原理であるとします。すべての人権に内在し、必要限度・最小限度の制限を加えるためにある、とします。

2比較衡量説:人権を制限することによってもたらされる利益と、人権を制限しない場合に維持される利益とを比べて前者の価値が高いと判断される場合には人権を制限できることができる、と捉えます

3二重の基準論:人権の中でも精神的自由は経済的自由に比べて優越的な地位を占めるもので、その制限については厳しいチェックが必要であると考えます。

憲法の人権の問題に限らず、法律の問題というのはある人の人権と他の日の人権が衝突した時、どのように解決すればいいのか?というワンパターンに過ぎません。

裁判でも何でも、最後はバランス感覚で決まります。

法律用語で「利益衡量」と言われますが、当事者の利益を天秤にかけて重い方を勝たせる、ただそれだけです。

憲法は国民が守るものではない

第九十九条天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

第99条に「誰がこの憲法守らなきゃいけないのか」って明記されているのですが その中に国民はいません。明記されているのは「天皇、摂政、国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員」です。

憲法「国民が権力に対して出した指示書」であり、「お前ら政府は、俺達の生活を脅かすようなことがしないようにルール作らねぇとな」というものなんです。

憲法の知識がない、生活保護の知識がないという方、いいですか?

これが、前提条件です。

ここまで読めば、いかに国民=生活保護受給者の力が強いかわかるはずです。

したがって、生活保護受給者の人権を侵害する行為はすべて憲法違反。

二重の基準論で考える「公共の福祉」による精神的自由の侵害は許されるものではないというわけです。

クレーム例:

お前ら、憲法98条知ってるか?憲法は公務員であるお前ら責任もって守らなければならないのは当然であって、私の人権を侵害するような行為(具体的)をしたらダメに決まってんだろ。憲法を知らない馬鹿だから、教育が足りてない。

第13条の幸福追求権を当たり前のように侵害してくるモラルのないゴミの集まりの猿みたいは言動は何とかならんのか。

憲法27条「勤労の義務」を履き違えた馬鹿野郎ども

よく馬鹿が生活保護受給者やニートに対して「勤労の義務があるんだ、働け!」とか言ってるんですけど、こいつら本当に馬鹿だということをまず理解しましょう

勿論、国民が強制的に働く「義務」あると解釈するなら

他の条文と矛盾が生じ。

身体的拘束・自由意思・権利の侵害となります。

じゃあ、この「勤労の義務」とは何なんでしょうか?

憲法の27条1項には「勤労の義務」が定められています。

すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。

日本国憲法は、 GHQの案を日本政府がある程度書き直して政府草案を作り、それを史上初の男女平等選挙で選出された帝国議会が審議して、さらに議論の末に修正を加えて成立させたものなのです。
 GHQの案そのままではなく、GHQの意向に反しない範囲では日本側がいろいろと修正することができたのでした。この日本側による修正や追加の例として27条の勤労の義務も、この日本側による修正の産物なのです。

もともとはGHQの案には「勤労の義務」存在せず、「勤労の権利」だけが存在していました。

格差社会を否定し平等を目指す社会主義的なニュアンスでの「働かざる者、食うべからず」という精神を反映させようと考えたのです。

ここでいう「働かざる者」とは、失業者や病人という意味ではななく、自らは労働しないで、他人の労働の成果による資産収入等で生活する資本家や大地主という意味合いです。

つまり憲法27条の「勤労の義務」とは、労働者中心の観点から、不労所得によって生活する資本家や大地主を牽制し、自らの労働によって生活すべきという精神を示す意図で、社会党により発案されました。

資本家や地主が配当や地代で生活することを現実に禁止できるわけではありませんが、精神的な意味でこの条項を入れることが提案されたというわけです。

イギリスの産業革命時代のように一部の資本家が私腹を越え90%以上の国民が低所得で14時間働かされる、これでは人権がありません。

国家が法で規制しないとこのような状態になりかねなかったのです。

生活保護制度もこの憲法の条文通り生活保護受給者が「株」などの「不労所得」に関しては原則禁止になっています。

このような発想の条文が、米国人が作ったGHQの原案に存在しなかったのは、ある意味当然のことです。

日常会話でこの「勤労の義務」が持ち出される時には、当初考えられていたのとは正反対の意味に解釈されるようになってしまいました。

高瀬弘文『「あるべき国民」の再定義としての勤労の義務
日本国憲法上の義務に関する歴史的試論―』

その他:憲法ルール

第十八条何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
第十九条思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第二十条信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
②何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
③国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
第二十一条集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
②検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第二十二条何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
②何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
第二十三条学問の自由は、これを保障する。
第二十四条婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
②配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
第二十五条すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
②国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
第二十六条すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
②すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

第二十九条財産権は、これを侵してはならない。
②財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

第三十一条何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

憲法第25条

生活保護法は憲法25条を元に作成されていますが、これを争点に行われた裁判もあるのですが、結論から言うと

現状では憲法25条の生存権は国民に対して直接与えられた権利ではなく、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るよう国政を運営すべきことを国家の責務として宣言したものであって、いわば、国家の努力義務なんですよ。

だから、必ずしも与えなければならないという見解ではないというのが現状です。

ただし、だからといって、好き勝手に保護停止するような行為は裁量権の逸脱として裁判所が関与するよという程度に納められた状況です。

話がちょっと難しいかもしれないので、最初読む方は、この第25条の項目は一旦飛ばしていいと思います。

日本国憲法第二十五条

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
②国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない

生存権が規定された最初の憲法は,1919年のドイツのヴァイマル憲法です。つまり「国が人間らしい生活を保障する」という「生存権」が憲法に規定されるようになるのは,20世紀になってからです。では,それ以前はどうだったのでしょうか。今では生存権というと,当たり前のように思われがちですが,この発想が出るのは,大変なことだったのです。
 19世紀,イギリスなどでは,産業革命による科学技術の発展により,人々は便利な生活が送れるようになりました。しかしその一方で様々な「社会問題」が発生しました。それは,貧富の差の拡大,特に貧困の問題です。貧しい者は飢え,十分な教育や医療すらも受けられませんでした。

貧困についてもこの頃は,「国は手を出すべきではない,自由放任でよい」,「お金のない人達は,怠け者なのだから飢えても自業自得だ」という意見が強い時代でした。
 20世紀に入ると貧困などの問題は,その原因が「個人の怠惰」ではなく,「社会の問題」であるという意見が強くなります。その中で「人間らしい生活の保障」のために,「国が国民に積極的に関与すべき」という意見が強くなります。この発想は,国が国民の人間らしい生活を保障する「生存権」や国が国民のために社会保障や雇用政策を積極的におこなう「福祉国家」の流れにもつながっていきます。

一つの考え方として、「プログラム規定説」という考え方があります。この考え方によると、生存権は、上記の通り、25条によって、国民が最低限度の生活を営むことができるように国に対して努力するよう要求しているだけであって、国民は国に対して「具体的な措置を講ずるよう請求できる権利」はありません

プログラム規定説によると、「国民に対する具体的な請求権」もなければ、「国が法律を定める義務」もないため、生存権に基づいて訴えを提起することはできません

これに対して、生存権について「法的権利性を肯定する」見解もあります。つまり、25条は国に対して、国民が最低限度の生活が送れるための法律を定めること、またそのための予算を付けることを法的義務としている考え方です。この考え方をするのが「抽象的権利説」と「具体的権利説」です。どちらも、法的権利性はあります。違いは裁判規範性があるかどうかです。言い換えると、生存権に基づいて、裁判で争えるかどうかです。

生存権に関する判例

最大判昭23.9.29:食糧管理法違反事件

『第25条第2項において、「国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規定しているのは、社会生活の推移に伴う積極主義の政治である社会的施設の拡充増強に努力すべきことを国家の任務の一つとして宣言したものである。そして、同条第1項は、同様に積極主義の政治として、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るよう国政を運営すべきことを国家の責務として宣言したものである。それは、主として社会的立法の制定及びその実施によるべきであるが、かかる生活水準の確保向上もまた国家の任務の一つとせられたのである。すなわち、国家は、国民一般に対して概括的にかかる責務を負担しこれを国政上の任務としたのであるけれども、個々の国民に対して具体的、現実的にかかる義務を有するのではない。言い換えれば、この規定により直接に個々の国民は、国家に対して具体的、現実的にかかる権利を有するものではない。社会的立法及び社会的施設の創造拡充に従って、始めて個々の国民の具体的、現実的の生活権は設定充実せられてゆくのである。』として、25条がプログラム規定説であることを示した。

最大判昭42.5.24:朝日訴訟

結核を患っていたXが生活保護法に基づく医療扶助及び生活扶助を受けていました。しかし、Xの兄からの仕送りがあることを理由に、扶助打ち切りとなり、争られた。
これに対して最高裁は、「憲法25条1項はすべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に具体的権利を賦与したものではない」とし、25条の法的権利性を否定している点では、プログラム規定説を採用しています。
一方で、「何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、厚生大臣の合目的な裁量に委されてる。そしてその判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあっても、裁量の逸脱と濫用がある場合以外は、違法の問題は生じない」として
裁量権の著しい逸脱がある場合、司法審査の可能性を認めるということから「裁判規範性を肯定」しています。そのため、「裁判規範性あり」という点では、プログラム規定説には当てはまらないので、25条は、完全なプログラム規定説ではないと解されています。

最大判昭57.7.7:堀木訴訟

障害年金を受給していた者が、子を育てていたため、児童扶養手当の受給申請をした。
しかし、障害年金児童扶養手当を同時に受給することはできない併給禁止の規定があり、申請が却下され、争われた。
これに対して最高裁は、
憲法25条の『健康で文化的な最低限度の生活』とは、きわめて抽象的・相対的な概念であり、立法による具体化が必要であり、具体的な立法措置を講ずるかの選択決定は、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであり、立法府の広い裁量に委ねられている。」として25条の法的権利性は否定した。
また一方で、「立法府の措置が著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事柄であるといわなければならない」として、裁量の逸脱・濫用の場合は、司法審査の対象となるとのことなので、裁判規範性ありと判断しました。そのため、朝日訴訟』同様、プログラム規定説ではあるが、裁判規範性はあると解釈しました。

つまり、過去2回の裁判で、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」というのは、「国が直接個々の国民に具体的権利を賦与したものではない」という結果だけど、「著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合のみ」だけ動きますよということになります。

じゃあ、ダメじゃんって思われるかもしれないんですけど、そうですね。

要するに、「保護停止」レベルじゃないと裁判所は動きませんという感じです。

クレーム例:

すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言しているのにもかかわらず、それは口からの単なる出まかせで、私たち国民の生存権を裁判で訴えられるまで脅かして好き放題やる。役所の連中には、ケースワーカー〇〇を筆頭にモラルがない、ゴミの集まりだ。

生活保護

第一章 総則
(この法律の目的)
第一条この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。

生活保護法第1条を争点にした判例はありません。

ポイントは「自立」を「助長」することにあります。

判例でも「自立」という定義が法律で定められておりません。

言葉時点でいうならば

1 他への従属から離れて独り立ちすること。他からの支配助力を受けずに、存在すること。
2 支えるものがなく、そのものだけで立っていること。

となります。

世の中の皆さんは誰も「自立」していません。ケースワーカーに役所にしがみついて自立できていません。

「助長」は、

力を添えて、ある物事成長発展を助けること。

となります。

勿論、これは「強制」してはいけません。

(無差別平等)
第二条すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。
(最低生活)
第三条この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。

「維持することができるもの」ということは、突然の保護打ち切りなんかご法度になります。

第4条 生活保護の要件

(保護の補足性)
第四条保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。
(この法律の解釈及び運用)
第五条前四条に規定するところは、この法律の基本原理であつて、この法律の解釈及び運用は、すべてこの原理に基いてされなければならない。

この第4条は重要です。

まずはこの「能力」について解説します。

稼働能力の活用について

稼動能力の活用については、

(1)稼動能力を有するか、

(2)その能力を活用する意思があるか、

(3)実際に稼働能力を活用する就労の場を得ることができるか否か

の要素により判断することとされています。

行政側では一応下記のようことが行われているはずです

稼働能力判定会議運営要領

対象
判定会議の対象者は、新規保護申請者又は生活保護受給者で、次に掲げるものとする。
 
(1) 現に就労しておらず、稼働能力の活用について検討を要する者
 
(2) 現に就労しているが、稼働能力を十分に活用していないと判断される者
 
3 稼働能力の評価について
稼働能力の有無及び程度の評価については、次に掲げる事項を総合的に勘案して行う。
 
(1) 年齢
 
(2) 傷病、障害等の身体状況
 
(3) 保有する資格
 
(4) 生活歴及び職歴
 
(5) 求職活動状況(稼動の意思)
 
(6) 地域における雇用情勢
 
(7) 育児又は介護の必要性
 
(8) その他就労を阻害する要因として考えられるもの
 
4 支援方針について
前項の規定により稼働能力を評価した結果をもとに、次に掲げるとおり支援方針を設定する。
 
(1) 支援内容の設定
 
ア 6か月以内の就職を目標とする早期集中的支援
 
イ 期間を定めない就労支援
 
ウ 中間的就労に向けた支援
実施体制
判定会議の開催は、自立支援係長の主催により行う。
 
(1) 構成員
構成員は、次のアからカまでのうちから6人以上の出席で開催可能とするが、組織的決定事項のため、より多くの参集を図るものとする。
 
ア 保護課長
 
イ 査察指導員
 
ウ 面接相談係長
 
エ 自立支援係長
 
オ 現業
 
カ 就労支援員
 
キ 必要に応じて関係機関の職員、嘱託医等
 
(2) 開催要件
構成員6人以上の出席により開催されるものとする。
 
(3) 開催時期
必要に応じて随時開催する。
 
6 開催後事務
判定会議の対象を担当する職員は、当該判定会議の結果について稼働能力判定会議記録票を作成し、当該記録票を添付の上、電子起案により専決者の決裁を受けるものとする。

矛盾するようですけど「稼働の意思ゼロ」って言った方が稼働能力がないという判断の材料とはなりますが、結局、福祉事務所が勝手にやることなんでさじ加減ですけど、

おすすめは、やはり、あらゆるところにクレーム入れて暴れまくる、前科をつける、就職歴ゼロと詐称して、生活歴を全てひきこもりと申告した方がいいでしょう。

それでも、やばい「維新の会」のような福祉事務所は関係ありません。

これを逆手にとって就労指導された場合は、

会議を開いた奴6人をクレームのターゲットに絞って行うのも個人的には有効かなと思います。

第1項で能力を活用しなければならないかと解釈されそうですし、第2項で親からの仕送りがあればそっち「優先ね」って言ってるわけで「要件」ではないということを意味しています。

判例もみていきましょう。

求職者の稼働能力活用 岸和田訴訟(大阪地裁平成25年10月31日判決)

【事案の内容】
 30代の原告が、仕事を探し続けても見つからず、保護実施機関に生活保護申請に赴いたところ、5回にわたって生活保護申請を却下され続けた。
 原告は、申請に対する却下処分の取消しと、却下処分によって被った財産的損害・精神的損害に対する慰謝料を求めて提訴した。

【問題の所在】
 生活保護法第4条1項は、保護の要件として、「その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用すること」(保護の補足性)を挙げ、資産と並んで、「稼働能力の活用」を要件とする。そこで、稼働年齢層においては生活保護の受給が可能かが問題となる。働く能力があっても、就労の場がみつからない場合等に、保護を受けることができることを明らかにした事例である。

【判断】
 一審判決は、(1)稼働能力、(2)稼働能力活用の意思、(3)稼働能力を活用する就労の場の三要素を判断枠組みとして、原告が、厳しい生活状況に置かれ保護の開始を望んで福祉事務所に赴いたにもかかわらず申請ができなかった経過等に着目し、「現在の生活状態や就労、求職状況等の聴取を怠り、かつ、保護の可否については慎重な判断が要求されるにもかかわらず、原告の年齢及び健康状態のみに基づいて安易に原告は稼働能力活用の要件を充足していないと即断し、それ以上原告夫婦への対応を行わなかった」と断じて、却下決定を取り消すとともに、岸和田市に対して約70万円の支払いを命じた。一審で確定。

【参考】
一審判決 大阪地裁平成25年10月31日判決 賃社1603・1604号81頁 

まず、岸和田訴訟です。

稼働能力の活用を要件として生活保護の申請→却下という判断を行った岸和田市の判断です。

これは、当然でしょう。大阪府なんで、維新の会のやり口です。

もう一つの判例をみていきましょう。判例は多いほど多いほどその判断が強固になっていきます。

稼働能力の判断基準 新宿七夕訴訟(東京高裁平成24年7月18日判決)

【事案の内容】
 東京都新宿区において路上生活をしていた原告が、同区の福祉事務所において生活保護の開始申請をしたところ、同区がホームレス施策として実施していた自立支援システム(巡回相談事業、緊急一時保護事業、自立支援事業など)の利用を求められ、原告がこれを断ると、生活保護法4条1項所定の「その利用し得る能力を、その最低限度の生活の維持のために活用すること」という要件を充足していると判断することができないという理由により申請を却下する旨の決定を受けた。
 原告は、東京都新宿区に対し、却下決定の取消しを求めるとともに、当初の申請に対して生活保護を開始する旨の決定(保護の種類及び方法につき居宅保護の方法による生活扶助及び住宅扶助とするもの)をすべき旨を命ずることを求め、さらに、申請日から東京都板橋区で保護を開始されるまでの間の扶助費(生活扶助費及び住宅扶助費)等の支払いを求めて東京地方裁判所に提訴した。なお、本件訴訟は、提訴日が7月7日だったことから、「新宿七夕訴訟」と呼ばれている。

【問題の所在】
 稼働能力の判断枠組みが問題となった事案である。稼働能力判断の3要素のうち、稼働能力を活用する意思が認められるために「真摯な努力」までは必要なく、「働く意思」さえあれば、その程度・量は問わない解釈を明らかにした。働能力判断の3要素のうち、稼働能力を活用する意思が認められるために「真摯な努力」までは必要なく、「働く意思」さえあれば、その程度・量は問わない解釈

【判断】
 一審判決は、稼働能力の活用要件について、「当該生活困窮者が、その具体的な稼働能力を前提として、それを活用する意思を有しているときには、当該生活困窮者の具体的な環境の下において、その意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得ることができると認めることができない限り、なお当該生活困窮者はその利用し得る能力を、その最低限度の生活の維持のために活用しているものであって、稼働能力の活用要件を充足するということができる」とし、稼働意思については「当該生活困窮者が申請時において真にその稼働能力を活用する意思を有している限り、生活保護の開始に必要な稼働能力の活用要件を充足」しているとし、さらに就労の場については「現に特定の雇用主がその事業場において当該生活困窮者を就労させる意思を有していることを明らかにしており、当該生活困窮者に当該雇用主の下で就労する意思さえあれば直ちに稼働することができるというような特別な事情が存在すると認めることができない限り、生活に困窮する者がその意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得ることができると認めることはできない」とした。そのうえで、原告についても、その意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得ることができたとはいえないなどとして、新宿区の却下決定の取消しのみならず、義務付けも認容した。
 その後、新宿区が控訴したが、二審判決も、前記「特別の事情」の有無についてさらに詳細な検討を加えたうえで、一審判決を支持し、控訴を棄却した。二審で確定。

【参考】
一審判決 東京地裁平成23年11月8日判決 賃社1553・1554号63頁
二審判決 東京高裁平成24年7月18日判決 賃社1570号42頁

これは重要な判決です。

まず、東京において住所不定で保護を申請した際に、貧困ビジネス収容施設に東京都新宿役所が申請者を押し込もうとしたところ、それを断ったために保護申請却下したのですが、これ自体で「稼働能力の活用」をみたしていないとして保護却下することは違法となりました。

もう一つ、平成24年東京高裁では、稼働能力の活用の意思とは「稼働能力を活用する意思が認められるために「真摯な努力」までは必要なく、「働く意思」さえあれば、その程度・量は問わないと解釈しました。

これは、いままで前例ではありません。

勿論、行政解釈が東京高裁の解釈に勝てるわけありませんのでこれは大きい判例です。

第4条第3項 受給者を一番保護する「急迫した事由」

そして、第3項が一番最優先として重要で「急迫した事由」とは、「単に生活に困窮しているだけでなく、生存が危うくされるとか、その他社会通念上放置し難いと認められる程度に状況が切迫している場合」と一回裁判の判例で具体的に示された過去があります。

この状況だったら、第1項、第2項を満たしていなくても保護を受けさせますよという話になります。

老齢基礎年金の年金担保貸付利用者の保護申請 那覇市年金担保事件(那覇地裁平成23年8月17日判決)

事案の内容】
 生活保護受給中の高齢の原告は、指導により生活保護受給中は年金を担保に借入れを行わない旨の誓約書を提出した。その後、原告は生活保護を廃止され、改めて年金担保貸付を受けたが、保護廃止から半年後に再度生活保護を申請した。
 しかし、保護実施機関は、原告が受給中の年金から返済を行っていたことを理由に上記申請を却下する決定を行ったことから、原告がこれを不服として、同却下決定の取消し、生活保護開始決定の義務付け及び生活保護による金銭給付を求めて提訴した。

【問題の所在】
 厚生労働省は、年金担保貸付について、同貸付を利用するとともに生活保護を受給していたことがある者が再度借入れをし、保護申請を行う場合には、当該申請者が急迫状況にあるかどうか、保護受給前に年金担保貸付を利用したことについて、社会通念上、真にやむを得ない状況にあったかどうかといった事情を勘案した上で、原則として、保護の実施機関は資産活用の要件を満たしていないことを理由とし、申請を却下して差し支えないとしている(昭和38年4月1日社保第34号厚生省社会局保護課長通知)。
 本件は、この例外となるべき事情についての判断枠組みを提供している。

一審判決は、法4条1項の要件を満たさない場合であっても、法4条3項「急迫した事由」がある場合には、保護を開始する義務がある場合があるとした。そして、「急迫した事由」とは、「単に生活に困窮しているだけでなく、生存が危うくされるとか、その他社会通念上放置し難いと認められる程度に状況が切迫している場合」をいうとし、原告に「急迫した事由」があったと認めた。

また、生活保護の申請に先立って年金担保貸付を受けた点についても、年金担保で借り入れた金銭がすべて生活保護を廃止された後に生活費のために借り入れた金銭の返済に充てられ、あるいは生活費として費消されたものと推認できるとして、「社会通念上真にやむを得なかったというべき」であるとして法4条1項の受給要件を満たすと判断した。これらの認定に基づき、却下決定を取り消すとともに、原告の申請に対して保護の開始決定を義務付けた。

一審で確定。
 なお、本件では、原告が生活保護開始の仮の義務付けが認容されている。

保護決定の却下の取り消し裁判です。

急迫した事由、具体的な預貯金残高は示していませんが、

貯金残高が月の生活扶助以下7万円以下だったら、急迫した事由を目安としていいでしょう。

この判例とこの条文を読むに至って、

福祉事務所の暴走の抑止力として、常にこちらが第4条第3項の優位性に立つために、貯金通帳にお金を入れておかないというのが基本戦略となります。

クレーム例:受給者側は、預貯金がなく厳しい生活を送っています。つまり、これは第4条第3項の「急迫した事由」にあたります。にもかかわらず、指導指示に従わなければ保護停止にするぞと言われました。つまり、これは明らかな生活保護法第4条違反の犯罪予告です。

(用語の定義)
第六条この法律において「被保護者」とは、現に保護を受けている者をいう。
2この法律において「要保護者」とは、現に保護を受けているといないとにかかわらず、保護を必要とする状態にある者をいう。
3この法律において「保護金品」とは、保護として給与し、又は貸与される金銭及び物品をいう。
4この法律において「金銭給付」とは、金銭の給与又は貸与によつて、保護を行うことをいう。
5この法律において「現物給付」とは、物品の給与又は貸与、医療の給付、役務の提供その他金銭給付以外の方法で保護を行うことをいう。

(申請保護の原則)
第七条保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し、要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる。

急迫した状況とは、お金がすっからかんということですね。

水際作戦を受けた場合はすぐに「人事課」に連絡しましょう。

第9条必要即応の原則

(必要即応の原則)
第九条保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行うものとする。
(世帯単位の原則)
第十条保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。但し、これによりがたいときは、個人を単位として定めることができる。

必要即応の原則、つまり、それぞれのケースに応じて有効かつ適切に行うのが原則ということですね。

当ケースに無理難題な指導をしたとして、必要最低限を超えた指導(27条)と同時に必要即応の原則、違反としてクレームを入れることが可能です。

第17条 生業扶助ロジック

(生業扶助)
第十七条生業扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者又はそのおそれのある者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。但し、これによつて、その者の収入を増加させ、又はその自立を助長することのできる見込のある場合に限る。
一生業に必要な資金、器具又は資料
二生業に必要な技能の修得
三就労のために必要なもの

第二次安倍政権から「就労活動促進制度」が実施されています。

働く能力があり、一定期間で就労する見込みのある生活保護受給者に対して、ハローワーク等で求職活動をすることなどを条件に、就職活動に必要な経費の一部を支給する制度。生活保護受給者が増加する中で、働ける人に就労を通して自立するのを支援するために設けられた。月5000円が原則6カ月間支払われる。2013年8月より実施。

就労指導されるということは、勿論、就労する見込みのある生活保護受給者ということになるので、すかさず「就労活動促進費を申請します」といいます。

そしたら、ケースワーカーはなんのことかわからないので「あなたじゃ難しいと思うと」いって申請すら受け付けない態度を取ることでしょう。

そうなると、就労見込みがない生活保護受給者を就労指導したとしてこれは必要最小限を超えた指導になりますよね?

ということになるというロジックです。

第17条違反としても活用してクレームを入れます。

第24条 

(申請による保護の開始及び変更)
第二十四条保護の開始を申請する者は、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を保護の実施機関に提出しなければならない。ただし、当該申請書を作成することができない特別の事情があるときは、この限りでない。
一要保護者の氏名及び住所又は居所
二申請者が要保護者と異なるときは、申請者の氏名及び住所又は居所並びに要保護者との関係
三保護を受けようとする理由
四要保護者の資産及び収入の状況(生業若しくは就労又は求職活動の状況、扶養義務者の扶養の状況及び他の法律に定める扶助の状況を含む。以下同じ。)
五その他要保護者の保護の要否、種類、程度及び方法を決定するために必要な事項として厚生労働省令で定める事項
2前項の申請書には、要保護者の保護の要否、種類、程度及び方法を決定するために必要な書類として厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない。ただし、当該書類を添付することができない特別の事情があるときは、この限りでない。
3保護の実施機関は、保護の開始の申請があつたときは、保護の要否、種類、程度及び方法を決定し、申請者に対して書面をもつて、これを通知しなければならない。
4前項の書面には、決定の理由を付さなければならない。
5第三項の通知は、申請のあつた日から十四日以内にしなければならない。ただし、扶養義務者の資産及び収入の状況の調査に日時を要する場合その他特別な理由がある場合には、これを三十日まで延ばすことができる。
6保護の実施機関は、前項ただし書の規定により同項本文に規定する期間内に第三項の通知をしなかつたときは、同項の書面にその理由を明示しなければならない。
7保護の申請をしてから三十日以内に第三項の通知がないときは、申請者は、保護の実施機関が申請を却下したものとみなすことができる。
8保護の実施機関は、知れたる扶養義務者が民法の規定による扶養義務を履行していないと認められる場合において、保護の開始の決定をしようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、当該扶養義務者に対して書面をもつて厚生労働省令で定める事項を通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが適当でない場合として厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。
9第一項から第七項までの規定は、第七条に規定する者からの保護の変更の申請について準用する。
10保護の開始又は変更の申請は、町村長を経由してすることもできる。町村長は、申請を受け取つたときは、五日以内に、その申請に、要保護者に対する扶養義務者の有無、資産及び収入の状況その他保護に関する決定をするについて参考となるべき事項を記載した書面を添えて、これを保護の実施機関に送付しなければならない。

申請に関しては第24条に書かれています。

水際作戦の話は置いといて、

ポイントは14日以内です。

厚生労働省令の定める事項については生活保護法執行規則第1条第3項をみます。

3法第二十四条第一項第五号(同条第九項において準用する場合を含む。)の厚生労働省令で定める事項は、次の各号に掲げる事項とする。
一要保護者の性別、生年月日及び個人番号(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第五項に規定する個人番号をいう。以下同じ。)
二その他必要な事項

その他必要な事項で誤魔化しております。

扶養照会に関しては生活保護執行規則第二条です

(扶養義務者に対する通知)
第二条法第二十四条第八項による通知は、次の各号のいずれにも該当する場合に限り、行うものとする。
一保護の実施機関が、当該扶養義務者に対して法第七十七条第一項の規定による費用の徴収を行う蓋然性が高いと認めた場合
二保護の実施機関が、申請者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成十三年法律第三十一号)第一条第一項に規定する配偶者からの暴力を受けているものでないと認めた場合
三前各号に掲げる場合のほか、保護の実施機関が、当該通知を行うことにより申請者の自立に重大な支障を及ぼすおそれがないと認めた場合
2法第二十四条第八項に規定する厚生労働省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
一申請者の氏名
二前号に規定する者から保護の開始の申請があつた日

ちなみに、役所が「認めた」場合なので、「認めなかった」というロジックで扶養照会を強行する役所が多々あります。

必ずしも親族の個人情報が保護の許可の調査に必要かといわれると、そうではない。

あくまでも「要件」ではなく「優先」という表記になってます。

扶養照会を回避する一番の方法は、親族関係は教えないことが一番です。

「知らない」または「言わない」ことになります。

宿者と居宅保護の原則 佐藤訴訟(大阪高裁平成15年10月23日判決)

【事案の内容】
 原告は、日雇い労働に従事していたが、高齢等により、就労が困難となり、野宿生活に至った。原告は、保護実施機関にアパートでの生活保護の利用を申請した。保護実施機関は、野宿生活者に対しては施設保護しか実施していないとして、原告に対し住宅を確保しての保護利用を認めなかった。原告は、施設保護の処分を不服として審査請求を行った。
 その後、知事は、1年たってもこれに対する裁決をしなかったため、1998年(平成10年)12月2日に、処分の取消しを求めて提訴した。

【問題の所在】
 生活保護法が居宅保護を原則(法第30条1項)としているにもかかわらず、野宿者については、施設への収容保護しか認めない「行政慣行」がある。本件は、この行政慣行の違法性が問われた。

【判断】
 一審判決は、原告の請求を認めた。これに対して、被告が控訴したが、二審判決は、本件について、原告が「居宅保護によることができない」との要件に該当せず、収容保護したのは違法であるとして、被告の控訴を棄却し、原告の請求を認めた。二審で確定。

【参考】
 一審判決 大阪地裁平成14年3月22日判決 賃社1321号10頁 最高裁Web
 二審判決 大阪高裁平成15年10月23日判決 賃社1358号10頁 

ホームレスが生活保護を申請して却下した大阪維新の会の悪質な例です。

勿論、裁判でも役所側が敗訴です。

第27条 指導指示助言

(指導及び指示)
第二十七条保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。
2前項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。
第一項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。

(相談及び助言)
第二十七条の二保護の実施機関は、第五十五条の七第一項に規定する被保護者就労支援事業、第五十五条の八第一項に規定する被保護者健康管理支援事業及び第五十五条の十第一項に規定する子どもの進路選択支援事業のほか、要保護者から求めがあつたときは、要保護者の自立を助長するために、要保護者からの相談に応じ、必要な助言をすることができる。

ところで、行政書士の試験で行政法で定番の問題なんですけど「指導」って法的拘束力ないですし、強制力を持たないんです。

もちろん、第3項にありますけど、これを勝手に「指導したから、従うのは当然だ」と言わんばかりのケースワーカーが存在します。

すかさずクレームで応戦する準備をしましょう。

クレーム例:生活の維持、向上その他保護の目的達成など一切関係なく、私の意に反して、強制しうるものと解釈してこの馬鹿CW〇〇は指導指示してきました。

全く自由を尊重されず、必要の最少限度に止めることもありません。やりたい放題です。

例2:

「被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。」と書いてあるにもかかわらず、なんで指導従わないのかと高圧的な態度で迫ってきました。ケースワーカーどころか公務員辞めさせるべきゴミっぷりにあきれるばかりである。

行政指導に関しては「生活保護法」の他に「〇〇市行政手続条例」からも引用する者があるのでチェックしていきます。

行政指導とは

〇〇市行政手続条例から

第4章 行政指導
(行政指導の一般原則)
第30条 行政指導にあっては,行政指導に携わる者は,いやしくも当該市の機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
2 行政指導に携わる者は,その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として,不利益な取扱いをしてはならない。
(申請に関連する行政指導)
第31条 申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては,行政指導に携わる者は,申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない。
(許認可等の権限に関連する行政指導)
32条 許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を有する市の機関が,当該権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合においてする行政指導にあっては,行政指導に携わる者は,当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない。

総務省|行政手続法(行政管理局が所管する行政手続・行政不服申立てに関する法律等)|行政手続法Q&A

行政指導とは、役所が、特定の人や事業者などに対して、ある行為を行うように(又は行わないように)具体的に求める行為(指導、勧告、助言など)をいいます。

 行政指導は処分ではないので、特定の人や事業者の権利や義務に直接具体的な影響を及ぼすことはありません。

 行政指導とは、役所から相手方に「求める」行為なので、役所の調査結果に基づいて一定の事実を不特定多数の方に示すことや相手方の求めに応じて法令の解釈や制度の仕組みを説明するなどの情報提供をするような行為は、通常は「求める」行為に当たらず、行政指導に含まれません。

行政指導は、処分のように、相手方に義務を課したり権利を制限したりするような法律上の拘束力はなく、相手方の自主的な協力を前提としています。したがって、行政指導を受けた者に、その行政指導に必ず従わなければならない義務が生じるものではありません。

 また、行政指導は、行政指導を行う役所の任務や所掌する事務の範囲内で行われなくてはなりません

 行政指導の相手方がその指導に従わないからといって、役所が、そのことを理由に、例えば、今まで平等に提供していた情報をその相手方にだけ提供しない、別の許可申請のときに意図的に嫌がらせをするなどの差別的、制裁的な取扱いをすることは禁止されています。

地方公共団体が行う行政指導については、行政手続法が適用されず、〇〇市手続き条例が適用されることになります。

口頭で行政指導された場合は書面を求められる
(行政指導の方式)
第33条 行政指導に携わる者は,その相手方に対して,当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。
2 行政指導に携わる者は,当該行政指導をする際に,市の機関が許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使し得る旨を示すときは,その相手方に対して,次に掲げる事項を示さなければならない。
(1) 当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項
(2) 前号の条項に規定する要件
(3) 当該権限の行使が前号の要件に適合する理由
3 行政指導が口頭でされた場合において,その相手方から前2項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは,当該行政指導に携わる者は,行政上特別の支障がない限り,これを交付しなければならない。
4 前項の規定は,次に掲げる行政指導については,適用しない。
(1) 相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの
(2) 既に文書(前項の書面を含む。)によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるもの

 行政手続法が適用される場合、請求することによって、書面が交付されます。

 行政指導を行う者は、口頭で行政指導をした場合に、相手方から書面で欲しいと求められたときは、原則として、その行政指導の「趣旨」「内容」「責任者」を書いた書面を渡すことになっています。さらに、行政指導の際に、許認可等に関する権限を行使可能であることが示された場合(例えば、行政指導に従わない場合には許可の取消しもあり得ると示された場合)に、その権限の根拠条項等に関しても書面で示すように求めることができるようになりました。

 ただし、行政上特別の支障がある場合や、その場で完了する行為を求める場合などは対象外となります。

行政指導等中止の求めを提出せよ
(行政指導の中止等の求め)
第34条の2 法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる規定が法律,本市の条例又は北海道の条例に置かれているものに限る。)の相手方は,当該行政指導が当該法律,本市の条例又は北海道の条例に規定する要件に適合しないと思料するときは,当該行政指導をした市の機関に対し,その旨を申し出て,当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。ただし,当該行政指導がその相手方について弁明その他意見陳述のための手続を経てされたものであるときは,この限りでない。
2 前項の申出は,次に掲げる事項を記載した申出書を提出してしなければならない。
(1) 申出をする者の氏名又は名称及び住所又は居所
(2) 当該行政指導の内容
(3) 当該行政指導がその根拠とする法律,本市の条例又は北海道の条例の条項
(4) 前号の条項に規定する要件
(5) 当該行政指導が前号の要件に適合しないと思料する理由
(6) その他参考となる事項
3 当該市の機関は,第1項の規定による申出があったときは,必要な調査を行い,当該行政指導が当該法律,本市の条例又は北海道の条例に規定する要件に適合しないと認めるときは,当該行政指導の中止その他必要な措置をとらなければならない。
第4章の2 処分等の求め
第34条の3 何人も,法令に違反する事実がある場合において,その是正のためにされるべき処分又は行政指導(その根拠となる規定が法律,本市の条例又は北海道の条例に置かれているものに限る。)がされていないと思料するときは,当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする権限を有する市の機関に対し,その旨を申し出て,当該処分又は行政指導をすることを求めることができる。
2 前項の申出は,次に掲げる事項を記載した申出書を提出してしなければならない。
(1) 申出をする者の氏名又は名称及び住所又は居所
(2) 法令に違反する事実の内容
(3) 当該処分又は行政指導の内容
(4) 当該処分の根拠となる法令又は当該行政指導の根拠となる法律,本市の条例若しくは北海道の条例の条項
(5) 当該処分又は行政指導がされるべきであると思料する理由
(6) その他参考となる事項
3 当該行政庁又は市の機関は,第1項の規定による申出があったときは,必要な調査を行い,その結果に基づき必要があると認めるときは,当該処分又は行政指導をしなければならない。

「行政指導の中止等の求め」は、当該行政指導をした国の行政機関に対して行うことができます。

申出書を受けた役所が、必要な調査を行うことになります。

第28条(報告、調査及び検診)

第二十八条保護の実施機関は、保護の決定若しくは実施又は第七十七条若しくは第七十八条(第三項を除く。次項及び次条第一項において同じ。)の規定の施行のため必要があると認めるときは、要保護者の資産及び収入の状況、健康状態その他の事項を調査するために、厚生労働省令で定めるところにより、当該要保護者に対して、報告を求め、若しくは当該職員に、当該要保護者の居住の場所に立ち入り、これらの事項を調査させ、又は当該要保護者に対して、保護の実施機関の指定する医師若しくは歯科医師の検診を受けるべき旨を命ずることができる。
2保護の実施機関は、保護の決定若しくは実施又は第七十七条若しくは第七十八条の規定の施行のため必要があると認めるときは、保護の開始又は変更の申請書及びその添付書類の内容を調査するために、厚生労働省令で定めるところにより、要保護者の扶養義務者若しくはその他の同居の親族又は保護の開始若しくは変更の申請の当時要保護者若しくはこれらの者であつた者に対して、報告を求めることができる。
3第一項の規定によつて立入調査を行う当該職員は、厚生労働省令の定めるところにより、その身分を示す証票を携帯し、かつ、関係人の請求があるときは、これを提示しなければならない。
4第一項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
5保護の実施機関は、要保護者が第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は医師若しくは歯科医師の検診を受けるべき旨の命令に従わないときは、保護の開始若しくは変更の申請を却下し、又は保護の変更、停止若しくは廃止をすることができる。

28条を無視したから、停止廃止されるのでは?という懸念が生まれるかもしれません

先述の通り、法4条5条が強い、つまり、急迫した事由に勝るものはないので、

従わない場合の保護停止でも、4条を争点にして訴訟を起こす形となります。

訪問来た時に、ケースワーカーが生意気な場合は、28条3項を使って「立ち入り調査票をみせろ」といえば、ケースワーカーは提示しなければなりませんが、これ持ってなかった場合、強烈なクレームをお見舞いしてやればOKとなります。

生活保護執行規則第4条(立入調査票)
第四条法第二十八条第三項の規定によつて当該職員の携帯すべき証票は、様式第一号による。

刑法・刑事訴訟法

わずかな不正受給や違法行為に警察は関わらない(刑法の補充性)

先程の検挙率の低さも驚愕ですが、そもそも認知件数だけでも氷山の一角で、実際に被害届を受理しないパターンが数えきれないほどあります。

これこそ統計を取っていないのですが、実際警察署にいってレイプ被害にあって相談をしたとしたら警察は「証拠は?」って言われるんですよね。

証拠もなにも糞もないですよね。

痴漢の現行犯なら、騒ぎにはそこそこなるのですが、レイプ被害は後日相談に行っても突き返されるのが現状にあります。

例えば、

「いじめ問題」も被害者が自殺したり、死体が出てやっと警察が動きます。

暴行でも傷害を受けて医者に駆け込んでわざわざ診断書を作らないと「暴行傷害」に昇格しません。

「暴行罪」だけなら傷なので傷がないので映像などの証拠がないと動きません。

面倒なんですよ

その他もろもろです、軽犯罪なんて相手にされません。

冤罪はかけるのに、レイプ被害は相手にしない、この警察の仕組みはどうなっているんでしょうか。

刑法でいう違法とは「法益を侵害する」ことをいい、そのうち「個人的法益」に関して優先されるものは「生命」→「身体」→「自由」→「名誉」→「財産」となります。

覚せい剤取締法といった「特別刑法」もあります。

世の中には様々な「違法」行為があります。民法は究極的にいえばお金の問題に帰し、もし間違っていたら返せばよいで済むのですが、いざ犯罪となると、前科者のレッテルが貼られ、懲役・禁固刑を科されれると自由を奪われ、究極は「死刑」→生命さえ奪われるものです。

当該違法な行為を犯罪として定めるためにはそもそもの違法のレベルが質量ともにたかくなければなりません。

そのため、民法その他の法律で対処できるかぎりはそちらに任せ、刑法はあまり出しゃばらない。

これを刑法の補充性と言い、謙抑制ともいいます。

警察が、ほぼ確実に動く個人的法益の侵害は「生命」の侵害つまり殺人です。

逆にいえば、「身体」→「自由」→「名誉」→「財産」。

「身体」でも「外傷」が残っていない程度であるなら警察は、動かないということです。

以上のことから、法を犯せばなんでも警察が頼りになるという思想は捨てましょうということです。

これはシステムの依存になります。

ルールはあくまでもルール、法は法であり、結局、警察がどれくらいやれば動くのか、どれくらい受けても警察は動かないのかという一般人は把握できないと

犯罪者なんか「これくらいなら警察は動く」と学習していくので、そこで自衛能力に圧倒的が差がついてしまいます。

逆に、交通課のように些末なスピード違反の上げ足をとって点数を稼いだりするしょうもねぇこともしているわけです。

推定無罪の原則

訴訟法というのは、裁判所で裁判を行う時のルールを定めた法律です。

現在の民事訴訟法と刑事訴訟法は、「真実発見」を究極の目的としているものではない、ということを理解する必要があります。

民事訴訟では、原告が訴えを起こした「訴訟物」について、原告と被告が主張、立証を重ね、最終的に原告の掲示した「訴訟物」が認められれば原告勝訴、認められなければ、被告勝訴ということになります。

刑事訴訟も、基本的には民事訴訟と同じで、検察官が起訴した「訴因」に基づいて審理が行われ、それが認められれば被告人は有罪となり、認められなければ被告人は無罪となります。

刑事訴訟法は、警察官に呼び止められたり、無実の罪で身柄拘束された時だけでなく、裁判員に選ばれて判断を下すために必要不可欠な法律です。

刑事訴訟法の最大の理念は「無罪推定の原則」です。

つまり、裁判で有罪判決を受けるまでは、何びとも「無罪」であると推定されるという原則です。「疑わしきは罰せず」です。

何故かというと法律の肝が「個人の利権は最大限尊重されるものであり、各個人は他者の権利を害しない限りいかなることをも行う自由を有する」でからです。

刑罰には「懲役」「禁固」のように、一定期間刑務所に拘束されて、自由を奪われるものがありますい、「死刑」のように生命を奪われるものもあります。

このような意味で、刑罰は、行政法規で禁止したり制限する場合と異なり、究極の個人の権利侵害行為なのです。

したがって、究極の人権侵害行為を行うためには、公正な裁判所の公正な手続きにのっとって判決が下されるまでは、無罪とて扱わなければいけません。

不正受給とは???

人質司法上、昨今の生活保護受給者の不正受給は全体の0.29%

高市早苗は、この0.29%を何を解釈したのか「不正受給は取り締まれ」と連呼して、アホなSNSの奴らは、不正受給が問題になっていると鵜呑みにします。

不正受給の額は200万相当で銀行口座に入っていたら就労している状態で収入申告しなかったぐらいの相当のレベルじゃないと警察は動きませんし、これでやっと「不正受給の発覚」になります。

珍しい上にメディアも取り上げやすいのでニュースにもなります。

万引き同様「不正受給罪」という罪はありません。

(詐欺)
第二百四十六条人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

(背任)
第二百四十七条他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(準詐欺)
第二百四十八条未成年者の知慮浅薄又は人の心神耗弱に乗じて、その財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。

これに該当して警察が動かないといけない程悪質かどうかのレベルじゃないと「不正受給」というのは司法上成立しません。

「水際作戦」が詐欺罪にならないからって横行しているのと同じです。

ケースワーカーの違法な指導指示によるパワハラで苦しんでいる受給者も大勢いるのですが警察沙汰にはなりません。

というわけで、日本生活保護党の西川英樹総書記における不正受給テクニックを推奨します。

生活保護受給者のポイント収入が保護費から減額されない理由: 西川英樹 養生ブログ

判例

昭和23年刑事訴訟法405条および410条2項にて初めて「判例」という言葉を規定しました。

個々の裁判において示された判断の根底にある裁判所の一般的な考え方、学説でいえば「〇〇説」に相当するようなものを判例とよぶこともありますが、ここでいいう判例と波、個々の特定の裁判(判決・決定)において示された裁判所の判断です。

それはのちに別の事件を裁判する時に先例となるような性質の判断でなければならず、先例となりうるためには、その判断が他の事件にも適用することができるような一般性を有していることが必要になります。

しかし、事実の認定や刑の量定などの判断は、のちの裁判に際してかなり参考になるものであるから、広い意味で洗礼だといえないこともないけれども、その前提となる証拠や事実関係は事件ごとに千差万別で、しかもその微妙な差を無視してはこの判断は意味を失いますから、これを別の事件に直接適用できるような一般命題の形に直すことは実質不可能といっても差し支えありません。

そのためにこれらの判断は判例ではないとされています。

これに対して法律的な判断は、その前提事実を捨象してこれをある程度一般的な命題とすることができ、それを後の事件に直接当てはめることができます。

なので、法律的な判断だけが判例と言われます。

最高裁判所自身も、刑事訴訟法405条の「判例」の意義について「量刑理由を判示しただけで他の事案に適用すべき法律的見解を含んでいない」ものは判例ではないと判示しています。

ところで、このような裁判所の法律的判断は、裁判の理由の中で述べられるものですので判例とは「裁判所が個々の裁判の理由の中で示した法律的判断」をいう、と定義しておいていいでしょう。

全国には極めて多数の裁判官がいてそれぞれ裁判をしているがどの裁判官に当たっても同じ裁判がなされるのでなければ不公平となります。当事者は裁判官を選択することができませんから、裁判官がまちまちな裁判を刷れば人の運不運の問題となります。

そのため、過去の判例が事実上拘束する相手方は、直接には裁判官となります。

これに対して検察官や弁護士は直接には拘束されないから、どういう意見を述べようと自由ですが、裁判官に対し自己の期待する裁判を求める立場にある以上、判例を全く無視した論議をしてもあまり意味はなく、それよりは裁判官が判例に拘束されていることを前提として訴訟活動をした方が実際的であり有効となります。

強い判例と弱い判例

変更される可能性の少ない判例を「強い判例」、その可能性がかなりあると思われるのを「弱い判例」と呼ぶことに利ます。

その判例が長年にわたって繰り返され、いわゆる「確立した判例」になっている場合はその強度は極めて高く、これに対して一回だけのもの、特にかなり以前に1回出されたに過ぎない判例はそれに比べると弱くなります。

更に、裁判官全員一致の判例は反対意見のあるものに比べて安定度が高くなります。

八対七というようなわずかの差で決定された判例は、反対説にも相当の理由のある場合で、将来裁判官に異動があると変更される可能性が比較的高いと考えられます。

下級審の裁判官として、自分の抱えている問題について判例がある場合、それが右にいう強い判例、とりわけ「確立した判例」があればそれに従って裁判すべきことになりますし、それがまた裁判実務の通常のあり方でしょう。

しかし、時としてはその判例の維持される可能性がそれほど高くなく、しかも最高裁判所としてそれは違う判断をすることが相当だと思われる場合もないわけではありません。

日本では判例そのものは法たる性質をもたず、裁判官が判例を尊重しこれに従うのは、いわば裁判官の職責・職務上の義務がそうさせるわけです。

しかし、そのこととは別に、同じ判例が繰り返され「確立した判例」となっていくのに伴って、その内容が不文の法としての力をもつに至るという事実のあることも忘れてはなりません。

生活保護に関する判例

もっと生活保護に関する裁判例をみていきましょう。

裁判に関しては朝日訴訟・堀木訴訟の過去の判例から「保護停止廃止」などの強行に出ない限り裁判を起こせません。

実際に、そのような狂行に出た福祉事務所に対して起こした判例となります。

これらは氷山の一角で、福祉事務所が日常的に「保護停止廃止」をポンポン使ってた福祉事務所となります。

三重県鈴鹿市指導違反処分取消等請求事件

生活保護法(以下、単に「法」ということがある。)による保護を受けていた原
告は、処分行政庁から、原告が保有する自動車(以下「本件自動車」という。)の
売却処分に係る複数社の見積書の追加提出を求める旨の法27条の規定による
指導又は指示(以下「本件指導」という。)に従う義務に違反したことを理由とし
て令和4年11月1日付けで保護を停止する処分(以下「本件停止処分」という。)
を受けた。
本件訴えは、原告が、被告に対し、本件停止処分が違法であるとして、その取
消し並びに国家賠償55万円及びこれに対する本件停止処分の日を起算日とす
民法所定の法定利率による遅延損害金の支払を求める事案である。 

裁判所の判断

争点1(審査請求前置の要否)について
 本件停止処分を受けたことにより、原告は収入の途を絶たれ、わずかな手持ち
15 の金員により当面の生活をするほかなくなったのであり、審査請求をして裁決を
待つゆとりがなかったことは明らかである。したがって、処分により生ずる著し
い損害を避けるため緊急の必要があるときに該当するものとして、行政事件訴訟
法8条2項2号により、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することが
できる。なお、審査請求手続においても執行停止の申立てができることは、この
点の判断を左右しない。 

 争点2(本件自動車の保有を認めないことの違法性)について
 ⑴ 前提事実に加えて、上記1の認定事実⑴によれば、原告に関して次のような
事情が認められる。
 ア 原告は、ごく短い距離を歩くのも困難な身体障害者であり、少なくとも2
 か所に通院を続ける必要があった。
 イ 上記通院につき、福祉運送車両の使用は不可能とされており、その都度タ
クシーを予約するのも容易かつ確実な方法ではなく、現実的とはいえない。
 ウ 本件自動車に処分価値はなく、むしろ処分に費用を要する。
 エ 原告は、本件自動車の維持に要する諸費用(ガソリン代・車検費用・保険
料)をこれまで賄うことができている。
 オ 原告は、身体障害があるものの、本件自動車の運転は可能とされ、自動車
運転免許の更新も受けている。
 カ 原告は、上記通院のみならず、本件自動車でスーパーマーケットへの買物
や図書館等にも行きたいと強く希望している。
 キ 三重県鈴鹿市においては、自動車は一般世帯で相当に普及しており、公共
 交通機関を含む地域の交通事情等からしても、自動車の使用の必要性が高く、
その保有に違和感を抱かれるような状況にあるとは考えられない。
 ク 原告が本件自動車の利用に際して、通院や移動に要する費用やサービスを
新たに要求したり、虚偽の申告をしたり、不正の手段を用いたりしてその費
用を支出していた事実は認められない。
 ⑵ 上記⑴によれば、原告については、本件自動車の処分を強いることに合理性
は認められず、その保有を認めて生活全般に活用させ、自立を助長することこ
そが、法1条(目的)、3条(最低生活)、4条1項(保護の補足性)及び9条
(必要即応の原則)等の趣旨に沿うものであり、自動車の保有が地域の一般世
帯との均衡を失することにはならないと判断される。
20 憲法22条1項は「居住、移転」までには至らない一時的な移動の自由をも
保障していると解されるほか、日本も批准した障害者権利条約20条(個人の
移動を容易にすること)により「障害者自身が、自ら選択する方法で、自ら選
択する時に、かつ、負担しやすい費用で移動することを容易にすること」が求
められていること、障害者基本法及び障害者差別解消法により、障害者に対す
る社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮を求められている
ことに鑑みても、原告については本件自動車の保有を認めることが合理的であ
るといえる。 

以上のとおり、そもそも原告に本件自動車の保有を認めないこと自体が、処
分行政庁の裁量権を濫用したものとして違法であったと判断される

争点3(本件指導の違法性)について
 ⑴ 上記3のとおり、原告は被保護者としても本件自動車の保有を容認されるべ
き立場にあり、これを処分させる前提で見積書の追加提出を求めた本件指導も
また違法であったと判断される。
 ⑵ その上、原告は既に本件自動車が無価値であり、むしろ処分費用の支出を要
する旨の見積書を提出していたものであり、これと異なって処分価値があると
 の見積書が得られる可能性は極めて乏しかったと容易に推認される。
それにもかかわらず、処分行政庁は、その具体的な必要性を何ら明らかにし
ないまま、更に複数の見積書の提出を求めたものである。したがって、本件指
導は、この点においても、局長通知第11の2⑶にいう「指導指示が形式化す
ることのないよう十分留意すること」にも反した過剰な指導であり、法27条
2項が規定する「必要の最小限度に止めなければならない」との義務に反した
ものとして違法であると判断される。

三重県鈴鹿市で起きた自動車保有に関して保護停止を強行した件です。

車の所有は、車が資産となるかの問題となりますので、禁止というわけではありません。

処分指示が出されたら無視、または、この判例を元にクレーム入れます。

生活保護開始申請却下処分取消等請求事件 奈良県生駒市 令和6年5月30日

原告は、昭和42年生まれの女性であり、平成27年12月頃までは、生
駒市a所在の実家で、父(昭和16年生まれ、令和2年12月10日死亡)
及び母(昭和19年生まれ)と3人で生活していたが、平成28年1月6日、
現住所に転居して一人暮らしを始め、同月29日、保護開始の申請をした

処分行政庁は、原告に対し、令和2年12月15日付けで、本件廃止処分
をした。本件廃止処分に係る決定通知書には、廃止の理由について「親類・
5 縁者等の引取り」による旨の記載がある

本件廃止処分当時における保護廃止の要件の有無、これがあるとした処分
行政庁の判断に係る国家賠償法上の違法性及び過失の有無の裁判です。

原告は、平成28年1月29日、これまで実家で両親と生活をしていた
が、折り合いが悪く自立を目指して単身で生活を始めたが、預貯金なく、
就労収入もわずかばかりしかないため、今後安定した収入が得られるまで
の生活ができないとして、保護開始の申請をした。処分行政庁は、同日、
 原告について保護の必要性を認め、保護開始決定をした。

本件停止処分に至る経緯 指導の流れ
 ア 処分行政庁の職員は、令和2年9月8日、原告宅を訪問し、原告に対し、
法27条に基づく口頭指導として、求職活動のためにも携帯電話を契約し、
報告すること(報告期限同月11日まで)、真摯に求職活動を行い、稼働能
力を最大限活用できるよう努めることを指導した(乙10)。
イ 原告は、処分行政庁の職員に対し、令和2年9月8日、ヘルペス等の持
 病があるので就労は難しい旨、通院先の奈良県生駒市所在のクリニックに
就労についての意見書を書いてもらいたい旨述べ、同月11日、同クリニ
ックで福祉事務所から意見書を送付してほしいと言われた旨述べた(乙1
0)。そこで、処分行政庁は、同月14日、同クリニックに対して原告に係
る医療要否意見書の提出を求め、同月23日、普通就労・軽就労がいずれ
 も「可」である旨記載された同月16日付け意見書(甲19)を受領した。
なお、同クリニックは、精神科の診療を行う医療機関ではなく、整形外科・
内科・脳神経外科神経内科リハビリテーション科を標榜する医療機関
であり(甲20)、上記意見書に記載された同クリニックへの通院に係る傷
病名も慢性頭痛と気管支喘息のみであった(甲19)。
ウ 処分行政庁の職員は、令和2年9月25日及び同年10月5日、いずれ
も原告宅訪問時に不在であったことから、法27条に基づく文書指導とし
て、所定の期限までに現況の求職活動状況申告書を窓口へ提出すること、
所定の期限までに携帯電話を購入し、自立に向け真摯に求職活動を行うこ
と、毎週求職活動状況申告書を提出することを記載した指導指示書(甲2
1、22)を郵便受けに投函し、同月15日、原告宅訪問時に不在であっ たことから、法62条4項に基づく弁明の機会を同月20日午前10時に
付与する旨記載した通知書(甲23)を郵便受けに投函した(乙10)。
エ 処分行政庁は、原告が前記ア及びウの指導指示に従わず、弁明の機会に
も来所しなかったことから、令和2年10月22日、ケース診断会議を開
催し、同月20日付けで本件停止処分をした

本件廃止処分に至る経緯
ア 処分行政庁の職員は、令和2年10月28日、原告宅を訪問し、原告に
対し、弁明の機会の付与の結果及び本件停止処分について記載した通知書
(甲24)を交付した上、本件停止処分に至る経緯を説明するとともに、
法27条に基づく指導として、前記(2)ウの指導指示書と同内容を記載し、
1これに従わない場合には法62条3項に基づき保護を廃止することがある
旨を記載した指導指示書(甲25)を交付した(乙10)。
イ 原告の妹は、原告宅の賃貸借契約の保証人になっていたところ、本件停
止処分により家賃の支払が停止されたことについて不動産会社から連絡が
あったことから、原告が保護停止になった事実を知るに至った。原告の妹
は、令和2年11月16日、長男(原告の甥)をして原告とともに処分行
政庁の事務所を来訪させ、本件停止処分に至る経緯について説明を求め、
同月25日、原告、長男及び父の後見人とともに同事務所を来訪し、処分
行政庁の職員に対し、原告が健常者でないことを把握しているか、普通の
やり取りができると考えているのかを問いただした

原告は、令和2年12月4日、甥及び父の後見人とともに処分行政庁の
事務所に来所し、同月1日から特別養護老人ホームA荘(甲9の1参照)
の清掃の仕事を始めた旨報告して求職活動状況申告書を提出するとともに、
携帯電話については、先日手続をしようとしたところ、過去に滞納履歴が
あるため審査が下りなかった旨を説明した。原告の甥は、同月4日、処分
行政庁の職員に対し、原告は精神障害者であるのでそのことも配慮の上何とか保護停止解除してもらいたい旨述べたところ、処分行政庁の職員は、
原告は精神障害との認定もなく障害者として対応することはできず、原告
が就労して自立するしか保護停止解除はできない旨回答した

処分行政庁の職員は、令和2年12月9日、来所した原告に対し、原告
がA荘において開始した1日4時間、週2回の就労は月収二、三万円程度
で到底自立できない金額であるとして、法27条に基づく指導として、自
立に向けて、確実に収入が確保できるよう真摯に就職活動を行うこと、毎
週「求職活動状況申告書」を提出すること(1回目の提出期日は同月11
日まで)、処分行政庁及び関係機関と連絡が取れるよう携帯電話を確保する
ことを記載した指導指示書(甲26)を交付した

処分行政庁の職員は、前記エの指導に係る令和2年12月11日の期日
に原告が来所しなかったことから、同月15日午後3時20分頃、原告宅
を訪問した。丁度外出しようと自宅から出てきた原告は、処分行政庁の職
員に対し、同月11日来所しなかった理由について「父が10日に亡くな
り葬儀の準備などでバタバタしていた」旨述べ、「国保の手続はできました
し、もう停止から廃止にしていただいて構いません。今後はこのアパート
は滞納があるので、引き払い実家に戻ろうと思っています。」旨述べ、「生
活やっていけますか?」との質問に対して「苦しいですが、頑張っていき
ます。」旨答えて足早に立ち去った。

この裁判は審査請求2回あって取り消し却下されている経緯は割愛します。

法26条前段にいう「被保護者が保護を必要としなくなったとき」とは、
生計が向上して生活困窮の状態でなくなるとか、あるいは、扶養義務者から
実際に扶養を受けられるようになったなどのように、被保護者が法4条の要
件を満たさなくなり、保護を継続実施すべき状態でなくなった場合をいうも
のと解するのが相当である。
これを本件についてみると、本件廃止処分に係る決定通知書には廃止の理
由について「親類・縁者等の引取り」による旨の記載があるが(前提事実(4))、
実際に原告が母と同居して引取扶養を受けるには至っていないのであるから、
母による引取扶養を理由に「保護を必要としなくなった」として法26条の
保護廃止の要件を充足するに至ったものと認めることはできない。
(2) これに対し、被告は、原告が令和2年12月15日に処分行政庁の職員に
対してした発言が口頭での辞退の申出に当たる旨主張する。
そこで検討すると、被保護者からの辞退の申出により保護を廃止するには、
少なくともその申出が本人の任意かつ真摯な意思に基づくものであることを
要するものと解するのが相当である。
これを本件についてみると、原告が、本件廃止処分の当日である令和2年
12月15日、原告宅を訪問した処分行政庁の職員に対し、「父が10日に亡
くなり葬儀の準備などでバタバタしていた」旨述べ、「国保の手続はできまし
たし、もう停止から廃止にしていただいて構いません。今後はこのアパート
は滞納があるので、引き払い実家に戻ろうと思っています。」旨述べ、「生活
やっていけますか?」との質問に対して「苦しいですが、頑張っていきます。」
旨答えて足早に立ち去った事実は認められるものの(認定事実(3)オ)、これ
らの原告の発言は、処分行政庁の職員が出掛けようと自宅から出てきた原告
を引き止めて短時間の面談をする中で原告の心境を口頭で聴取したものにす
ぎず、同年10月20日に保護が停止されたことにより既に困窮状態にあり、
老人ホームでの就労開始によっても保護停止解除の見通しが立たず、滞納し
た家賃が妹に請求されて妹に迷惑を掛けている状況にある原告が、このまま
原告宅を賃借し続ける方途も見いだせないと考え、一時の感情から上記のよ
うな発言に至るのも無理のないところであって、このような発言をもって、
保護を受ける権利を自ら放棄する旨の申出として任意かつ真摯な意思に基づ
くものと認めるのは相当でない。そうすると、有効な辞退の申出があったと
は認められないから、本件廃止処分は保護廃止の要件を欠くものというほか
ない。
そして、保護受給中の者から提出された「辞退届」の取扱いに係る課長通
知第10問12の3の定めに照らせば、処分行政庁は、被保護者から辞退の
申出があった場合には、書面を徴求した上でそれが本人の任意かつ真摯な意
思に基づくものであること確認し、かつ、保護を廃止することで直ちに急迫
した状況に陥ると認められないことを確認すべきであったにもかかわらず、
職務上の法的義務に違背して違法に本件廃止処分をしたものといえるから、
本件廃止処分について国家賠償法上の違法性及び過失があると認められる。
(3) なお、被告は、原告が令和2年12月10日開始した父の相続により法定
相続分に応じてその遺産を取得し得る状況にあった旨主張するが、本件廃止
処分の時点までに原告が父の遺産を確定的に取得し、これを直ちに自らの生
活資金に充てることができる状態で管理していたことを認めるに足りる証拠
はなく、これが原告において活用し得る資産であったとはいえないから、父
の遺産の存在は前記(1)及び(2)の判断を左右し得るものとはいえない。
3 争点(2)(第1却下処分及び第2却下処分関係)について
(1) 第1却下処分及び第2却下処分はいずれも「親類・縁者等の引き取り」を
却下の理由とするものとされているところ、要保護者が実際に扶養義務者と
同居して引取扶養が行われるに至った場合には両者を同一世帯として保護の
要否を判定することになると解されるが、本件においては、上記各処分当時、
母による引取扶養が行われるに至っておらず、上記の場合には該当しない。
(2) これに対し、被告は、絶対的扶養義務者(民法877条1項)である母が
扶養の意思及び能力を有している以上、扶養請求権が法4条1項にいう「そ
の他あらゆるもの」に該当し、原告がこれを拒むことは認められないから、
問答集第5問5-9の記載によれば保護申請を却下すべきであり、問答集に
記載された解釈に従った処分行政庁に国家賠償法上の違法はない旨主張する。
しかしながら、扶養の方法(民法879条)は、金銭的扶養が原則であり、
引取扶養は、当事者間の合意を前提とした例外的な扶養の方法と解される。
問答集第5の〈生活保護と私的扶養〉における「例えば、実際に扶養義務者
からの金銭的扶養が行われたときに、これを被保護者の収入として取り扱う
こと等を意味するものであり、扶養義務者による扶養の可否等が、保護の要
否の判定に影響を及ぼすものではない。」、「「扶養義務者による扶養」が資産
(金銭)となり得るためには、要保護世帯以外の第三者である扶養義務者が
扶養の能力と扶養する意思を有していることが必要となる。すなわち、要保
護者本人の努力のみで資産となり得るものではなく、それが単なる期待可能
性にすぎない状態においては、第1項の「その他あらゆるもの」に含むこと
はできない。」、「一方で、例えば、扶養義務者が月々の金銭援助を申し出てい
る場合など、扶養義務者に扶養能力があり、かつ扶養をする意思があること
が明らかである場合においては、扶養義務者の扶養は、要保護者本人の扶養
請求権の行使(努力)によって、資産(金銭)となり得ることになる。」など
の記載はいずれも金銭的扶養を前提としているものと解されるところであり、
問答集第5問5-9についても同様に解される。
しかるところ、本件においては、第1却下処分及び第2却下処分の当時、
原告の母は、原告に帰ってきてもらいたい旨の意向を示していたのに対し(認定事実(4)オ、(5)オ)、原告は、実家に戻ることについて妹に反対されたこと、
母の認知症の症状にも変動があること、介護サービスとの調整を要すること、
自分が介護をしなければならないとすると自分の体調も悪化しかねないこと
などの懸念を表明して難色を示していたこと(認定事実(4)エ、カ、(5)オ)
が認められるところ、原告が統合失調症の残遺症状により対人関係の折衝に
援助を要する状態にあったこと(認定事実(4)イ)に照らせば、原告が独力で
妹を含む関係者間の調整を図った上で実家への帰住を実現することは期待し
難い状況にあったものというほかない。そうすると、問答集第5問5-9の
記載が引取扶養について妥当し得るとしても、原告が「単に感情的な理由の
みによって受けられる扶養の履行を受けない」場合に該当するとはいえない
から、これにより原告の保護申請を却下すべきものということはできない。
そして、処分行政庁は、令和2年12月15日には原告から実家に戻ろう
と思う旨の意向を聴取していたにもかかわらず、数か月経過後の第1却下処
分及び第2却下処分時点に至っても実家への帰住が実現しないことについて
原告及び原告の母の意向を聴取しただけで、実現可能性について何ら具体的
な調査・検討をしていないことをも併せ考慮すると、処分行政庁は職務上の
 法的義務に違背して違法に上記各処分をしたものといえるから、上記各処分
について国家賠償法上の違法性及び過失があると認められる。
(3) なお、被告は、原告が令和2年12月10日開始した父の相続により法定
相続分に応じてその遺産を取得し得る状況にあり、令和3年7月20日には
用地買収の対象となった不動産の代金30万円が支払われた旨主張するが、
上記代金30万円は原告の妹が代理受領したものであって(認定事実(5)ウ)、
これが原告に引き渡されたことを認めるに足りる証拠はない上、本件停止処
分後の原告宅の家賃や携帯電話代などの本来原告が負担すべき費用を原告の
妹が支払ってきたことからすると(認定事実(4)ア、(5)ア)、原告の妹が上記
代金30万円から事実上の回収を図るのは不当とはいえないところであり、
その他、第1却下処分又は第2却下処分の時点までに原告が父の遺産を確定
的に取得し、これを直ちに自らの生活資金に充てることができる状態で管理
していたことを認めるに足りる証拠はないことからすると、これが原告にお
いて活用し得る資産であったとはいえない。また、原告の母が用地買収の代
金60万円を受領したとの指摘についても、原告の母がこれを原告の扶養に充てることができる資力及び意思を有していたことを裏付ける証拠はなく、
そのような調査がされた形跡もない。したがって、父の遺産の存在は前記(1)
及び(2)の判断を左右し得るものとはいえない。

結論
よって、原告の請求は、損害賠償金合計55万円及びうち本件廃止処分に係
る損害賠償金11万円に対する令和2年12月15日から、うち第1却下処分
に係る損害賠償金22万円に対する令和3年4月23日から、うち第2却下処
分に係る損害賠償金22万円に対する同年8月4日から各支払済みまで民法
定の年3%の割合による遅延損害金を求める限度で理由があるからその限度で
認容し、その余の請求はいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。

この裁判は、是非、保護停止になる流れに至るまで読んで欲しいと思いましたので全部取り上げました。

これは、Fランク保護増減率-27%の奈良県生駒市の対応が滅茶苦茶ですし、審査請求も機能していないことがわかります。

「指導」に従わないことによる「保護停止廃止」ではなく、

「親類・縁者等の引き取り」を理由に保護停止廃止にした案件です。

指導無視に保護停止廃止にすると裁判で負けると知ってるから理由をすり替えてこれなら大丈夫だろう魂胆がみえます。

要保護者本人の努力のみで資産となり得るものではなく、それが単なる期待可能性にすぎない状態においては、第1項の「その他あらゆるもの」に含むことはできないにもかかわらず、法4条第1項の「その他あらゆるもの」と解釈して強行しています。

また辞退届の申し出に関して

被告は、原告が令和2年12月15日に処分行政庁の職員に対してした発言が口頭での辞退の申出に当たる旨主張したからといって保護停止ができるものではありませんので、「言質」取ったから主張も通用しません。

被保護者からの辞退の申出により保護を廃止するには、少なくともその申出が本人の任意かつ真摯な意思に基づくものであることを要するものと解するのが相当と判例で言われています。

実現困難な指導指示の違法性 増収指導事件(大阪高裁平成27年7月17日判決、差戻審)

【事案の内容】
 保護実施機関は、資産価値のない軽自動車を使用して友禅染の仕事に従事していた原告(被保護者、自営業)に対し、「収入を月額11万円(必要経費を除く)まで増収して下さい。」と指示(法27条)した。保護実施機関は、原告が月額3万円程度の収入しか上げられなかったため、指示の不履行を理由に生活保護廃止を決定した。原告は、保護廃止決定を違法なものであるとして、京都市に対し損害賠償を求めて提訴。

【問題の所在】
 被保護者が指導指示義務に違反した場合保護廃止の対象となりうるが、本件ではそもそも実現が著しく困難な指示(自営業者に対する増収指示)に基づく保護廃止が問題となった。また、書面には記載がないが口頭で指示されていた事項について指示の内容と認められるかが争われた。

【判断】
 一審判決は、原告が、当時置かれた生活状況の下で、友禅の内職の仕事で月11万円へと収入を増加させることは到底期待できず、本件指示は客観的に実現不可能又は少なくとも著しく実現困難なものというべきであるから、同指示は違法な指導指示に当たり、同指示の不履行を処分理由とする本件廃止決定も違法であると判断し、保護廃止後の生活保護費相当額である約400万円余りの損害を認めた。
 これに対し、二審判決は、「本件指示の内容を解するに当たっては、上記文言のみならず、本件指示書に記載のある指示の理由、本件指示に至るまでの経緯、処分行政庁による従前の指導内容、それに対する対応や認識などを総合考慮して判断すべきである」として、本件では、従前の就労状況では自動車を保有することはできず、保護を継続するためには、自動車を処分するか、増収を図るかしかないことは十分理解していたといえ、自動車を処分することで本件指示に違反したことにならないことも十分理解していた」等とし、自動車を処分すれば、本件指示に従ったことになるのであるから、指示の内容が客観的に実現不可能又は著しく困難な場合とまでは認めることができないとして、請求を棄却した。原告上告。
 最高裁は、下記のように結論づけ破棄差戻した。
判決要旨「生活保護法62条3項に基づく保護の廃止の決定に先立ち、処分行政庁による被保護者に対する同法27条1項に基づく指示が生活保護法施行規則19条により書面によって行われた場合において、当該書面に、指示の内容として、被保護者の特定の業務による毎月の収入を一定の金額まで増収すべき旨が記載されているのみで、被保護者の保有する自動車を処分すべきことも指示の内容に含まれているものと解すべき記載は見当たらないという判示の事情の下においては、処分行政庁が被保護者に対し従前から増収とともにこれに代わる対応として上記自動車の処分を口頭で指導し、被保護者がその指導の内容を理解しており、当該書面にも指示の理由として従前の指導の経過が記載されていたとしても、上記自動車の処分が当該指示の内容に含まれると解することはできない。」
 差戻審(大阪高裁平成27年7月17日判決)は廃止を違法と認めて、市に約684万円の損害賠償を命じた。判決確定。

これは最高裁まで行っているので重要な判例になります。

増収指導による指導指示が達成できなかった場合の保護廃止は「客観的に実現不可能又は少なくとも著しく実現困難なもの」として違法ですね。

2審は、本当は、増収指導を満たさなくても自動車を処分すれば保護廃止にならないのを原告が知ってたから、たとえそれが文書で記載されてなくてもわかってたんなら「指示の内容が客観的に実現不可能又は著しく困難な場合とまでは認めることができない」ということで棄却。注意して欲しいのは自動車を処分しなかった指導指示が保護廃止の裁量権の逸脱を争点にしているのではないと言ってることでがこれに上告して結局、負けというわけです。

仮の救済制度・稼働能力の活用 八幡浜市稼働能力不活用廃止事件(松山地裁平成26年7月11日決定)

【事案の内容】
 申立人(事件の当事者)は、平成24年5月から生活保護を受給し、平成26年1月には歩行障害ないし身体表現性障害と診断されていたところ、保護実施機関は申立人に対し、積極的に求職活動を行わない場合には生活保護の停止等がある旨を通知(指導)した。保護実施機関は、指導指示の不履行を理由として平成26年3月24日付けで生活保護停止処分をし、さらに、同年4月25日付けで生活保護廃止処分をした。
 申立人は、同年5月8日に再度生活保護を申請したが却下された。そこで、停止処分及び廃止処分の審査請求を申し立てたうえ、審査請求の裁決を待たず、さらに地方裁判所に本件各処分の取消しを求める訴えを提起するとともに、行政事件訴訟法25条2項に基づき、本件各処分の執行停止を申し立てた。

【問題の所在】
 すでに、生活保護廃止決定がなされた場合、再度、生活保護申請を行うことが可能であるが、これも却下された場合には、行政事件訴訟法25条に基づき生活保護廃止の効力を「停止」することを求めることができる。本件は、稼働能力の有無を本案審理事項として、執行停止が認められた事例である。

【判断】
 本件決定は、裁決を経ずに提起された本案訴訟の適法性を行訴法8条2項2号に基づいて認めたうえで、重大な損害を避けるための緊急の必要性について、「本件各処分は、申立人に生活保護の一切を支給しないとするものであり、申立人の最低限度の生活を脅かすもの」であり、「ひとたび最低限度の生活水準が維持できなくなった場合、申立人には、その生活や身体生命に直接重大な影響を及ぼす財産的損害や身体的、精神的損害が生ずる。これらの損害については、いずれも事後的な金銭賠償による回復が容易とはいえないし、相当ともいえず、事前に損害の発生を避ける必要性が高いといえる」と判断し、さらに、本案について理由があるか否かについては、「一件記録から看取される申立人の就労能力、本件各処分に至る経緯等からすると、本件各処分が違法である疑いがまったくないとはいえず、さらなる審理を尽くす必要がある」とし、本案事件の一審判決の言渡し後30日を経過するまでの間につき、廃止処分と停止処分のそれぞれの執行停止を認めた。

これは突出して酷い事件です。

八幡浜市は保護増減率-32.1%ですね。

生活保護廃止決定処分取消請求事件 山口県山陽小野田市 平成30年

生活保護を受けていた原告が、山陽小野田市福祉事務所長(以下「処
分行政庁」という。)から、同居する原告の二男が就労収入を得ていたことを
知りながら、指導指示に違反してこれを申告しなかったとして、生活保護廃止
処分(以下「本件処分」という。)を受けたのに対し、本件処分の取消しを求
める事案である。

法62条3項は、被保護者が指導指示に従う義務に違反したときは「保護
の変更、停止又は廃止をすることができる」と規定しており、法は、実施機
関に対し、処分をするか、するとしていかなる処分をするかについて、裁量
を与えたものと解されるところ、上記処分は、いずれも被保護者の権利利益
に重大な影響を及ぼし得るものであって、とりわけ保護の廃止は、継続して
いる保護の効果を将来に向かって剥奪する重い処分であるから、処分行政庁
裁量権の行使としてした処分が、当然考慮すべき事項を十分考慮しておら
ず、その結果、社会通念に照らし著しく妥当を欠く場合には、当該処分は、
裁量権を逸脱又は濫用するものとして違法となるというべきである。
そして、前記第2の2⑴ア、イのとおり、①法は、全て国民が要件を満た
す限り、無差別平等に保護を受けることができ(法2条)、全ての国民に対
しその最低限の生活を保護すべく、「急迫した事由がある場合」又は「急迫
した状況にあるとき」には、扶養義務者等の有無や申請の有無にかかわらず、
要保護者に対して必要な保護が与えられるべきである(法1条、4条、7条。
ちなみに、地方自治法上の処理基準(前記第2の2⑵。以下、単に「処理基
準」という。)においては、被保護者が保護を辞退する場合にさえ、保護の
廃止により直ちに急迫した状況に陥ることのないよう留意すべきとされる
(甲12〔481、482頁〕)。)と定めていることや、②処理基準にお
いて、指導指示違反により保護を廃止すべき場合として「保護の停止を行な
うことによっては当該指導指示に従わせることが著しく困難であると認めら
れるとき」が挙げられるなど、「廃止」に先立って「停止」を検討すべきと
の基準が示されていること(前記第2の2⑵)などに照らせば、指導指示違
反を理由とする保護の廃止に際しては、指導指示の内容の相当性や指導指示
違反に至る経緯、指導指示違反の重大性・悪質性のみならず、将来において
指導指示事項が履行される可能性、保護の「停止」を経ることなく直ちに保
護を「廃止」する必要性・緊急性、保護の廃止がもたらす被保護世帯の生活
の困窮の程度等を総合考慮すべきと解される。

また、指導指示違反に至る経緯や指導指示違反の重大性・悪質性を判断す
る前提としては、被保護者が当該指導指示違反の認識を有していたかどうか
についても、当然、把握・考慮されるべきこととなる。 

検討
指導指示違反に至る経緯、指導指示違反の重大性・悪質性について

本件では、処分行政庁は、前記1のとおり、一般的な世帯においては
親権者が未成年者の就労を知る機会が多く、知っていて当然であること
や、原告の世帯において収入無申告とこれに対する指導指示等が繰り返
されていたことのみを検討材料として、原告は二男の就労を知りつつ、
知らなかったと偽ったと判断し、それ以上調査をしなかった。
しかし、一般に、親権者である世帯主が同居の未成年者の就労の事実
を認識し得るか否かは、当該世帯の家庭環境(世帯構成や住居の間取り、
各人の生活リズムや会話の在り方、親権者の健康状態、未成年者の生活
費の支出状況等)や未成年者の就労状況(就労先の変遷状況や就労期間、
親権者の同意書等の取得方法、就労に係る外出時間と就労開始以前から
の外出の頻度や時間等)の個別具体的な状況により異なるというべきで
あり、親権者が当然に未成年者の就労の事実を知り得たとはいえない。
原告は、うつ病等に罹患しているため就労しておらず、自宅で過ごす
ことが多かったことがうかがわれるものの、他方で、二男は、平成27
20 年4月以降、高等学校の通信制課程に在籍しつつ、アルバイトをしてい
たところ、年齢的にも、家庭外での生活時間が相当に及んでいたと解さ
れ、実際、原告は、二男について、高等学校の授業に出席したり、友人
と遊びに行ったりする機会が多くあったと認識していた(前提事実⑴イ、
原告本人2、6、7、12頁、証人C14、31、32頁)。

そうすると、二男が日中外出していても不審には思わなかったと述べる原告の供
述(原告本人12頁)が直ちに信用できないということにはならない。
また、処分行政庁が平成29年7月頃の課税調査により把握した二男
の就労収入は、平成28年中にF、H及びIで就労した際のものである
ところ(前提事実⑶ウ)、これらの就労は、いずれも平成28年11月
に費用徴収決定や収入の申告に係る指導指示がされる以前のものか、又
は以前から開始されていたものである。しかも、二男は、当該指導指示
の時点で既にIでの就労を開始していたにもかかわらず、指導指示を受
けている場面においてすら担当職員らに当該就労の事実を伝えなかった
のであるから(前提事実⑶イ、証人C12、13、18、19頁)、原
告が同年11月頃から平成29年7月頃までの間に二男が就労収入を得
ていたことを認識し得なかったとしても必ずしも不自然とはいえない。
加えて、原告は、平成28年7月頃、担当職員らから二男の就労につ
いて確認するよう求められた際、二男から報告を受けたGでの就労につ
いては担当職員らに申告しており(前提事実⑶ア、甲1〔3~5頁〕)、
原告が認識できた事実については担当職員らに申告していたとも解され
ることに照らすと、申告されなかった事実について原告が知らなかった
可能性をも検討する必要があったというべきである。
以上によれば、処分行政庁は、原告が指導指示を受けていたのに、な
おも二男の就労の事実を知りつつこれを担当職員らに申告しなかったと
評価・推認するに足りる個別具体的事情の有無について、慎重に調査・
考慮すべきであったといえる。
ところが、処分行政庁は、二男から直接事情聴取することもなく(原
告本人14頁、証人C16頁、証人J22頁、証人K16、17頁)、
上記のような個別具体的事情の有無についての調査・考慮を一切行わな
いまま、原告が二男の就労の事実を当然認識していたものと決め付けて
本件処分に及んだといわざるを得ないから、本件処分に当たり、当然考
慮すべき事項(原告が二男の就労の事実を認識していたか否か)につい
て、これを十分に考慮しなかった(必要な調査を懈怠した)というほか
ない

将来において指導指示事項が履行される可能性及び保護の停止を経るこ
となく直ちに保護を廃止する必要性・緊急性について
前提事実⑴イ及び⑶ウのとおり、本件処分以前の平成29年5月1日
には二男が原告宅から転出しており、これにより原告の世帯は原告本人
のみになったことから(甲1〔10、11頁〕、証人C15、16頁)、
平成29年分の二男の就労収入の有無が不明であったにせよ、以後指導
指示違反(世帯員の就労収入の無申告)が再発・継続する可能性は低下
した(指導指示事項が履行される可能性が高くなった)といえる。
そうすると、結果的に指導指示の目的はほぼ達成されており、指導指
示事項を履行させるために直ちに保護を廃止すべき必要性や緊急性はも
はや認められない(なお、処理基準中の保護の「停止」に関するものと
して「当該被保護者が指導指示に従ったとき、又は事情の変更により指
導指示を必要とした事由がなくなったときは、停止を解除すること。」
との定めがあり(前記第2の2⑵)、これによれば、指導指示違反に伴
う法62条3項に基づく処分は、あくまで被保護者の指導指示違反を是
正するために行われるものであり、「事情の変更により指導指示を必要
とした事由がなくなったとき」には当該処分を行うことは予定されず、
既に処分が行われているときには解除し、取り消すべきものと解され
る。)。
また、前記アで認定説示したとおり、本件処分時点で処分行政庁が把
握していた事情に基づけば、原告に指導指示違反の認識(二男の就労の
事実の認識)があったとは認められず、指導指示違反が重大又は悪質で、
直ちに保護の廃止を行うべき客観的状況が生じていたともいえない。確
かに、原告世帯においては、長男の就労に関しても費用徴収決定がされ
たことがあるなど(前提事実⑵)、原告に対して同居する未成年者らの
就労収入の申告につき繰り返し指導指示がされながら、状況が改善され
てこなかった経緯もうかがわれるけれども、他方で、原告に対し保護の
「停止」の措置がとられた形跡はなく(弁論の全趣旨)、処理基準にい
う「保護の停止を行なうことによっては当該指導指示に従わせることが
著しく困難であると認められるとき」(前記第2の2⑵)に当たるとも
認め難く(前記ア のとおり、原告が指導指示に応じて二男の就労の事
実を報告することもあったのであるから、書面による指導指示の効果も
依然期待し得たというべきである。)、本件において、保護の停止を経
ることなく直ちに保護を廃止する必要性・緊急性も認めることはできな
い。 

保護の廃止がもたらす被保護世帯の生活の困窮の程度について
担当職員らも認めるとおり(証人J12、13頁、証人K12、19
頁)、精神疾患等を有し就労困難な原告にとって、生活保護なくして最
低限度の生活を維持し得ないことは明白であって、この点は、保護の廃
止がもたらす被保護世帯の生活の困窮の程度として十分に考慮されなけ
ればならない(なお、処理基準には、被保護者が活用すべき資産を有し
ているか否かに関する説明部分ではあるが、「保護の廃止」は「特別な
事由が生じない限り、保護を再開する必要がない場合又はおおむね6か
月を超えて保護を要しない状態が継続する場合に行うもの」とされてい
る。甲12〔446頁〕)。
ところが、本件処分に際して、上記事情が十分に考慮されたとはうか
がわれず、かつ、担当職員らから原告に対し、保護の再申請について適
切な手続教示がされたとも認められない(甲1、5、原告本人15、1
25 6頁、証人J13、14頁、28頁、証人K12、13頁)。
⑶ 小括
上記検討のとおり、本件処分は、行政処分庁において、指導指示違反に至
る経緯や指導指示違反の重大性・悪質性を判断する前提として十分に考慮す
べき事項(原告が二男の就労の事実を認識していたか否か)や、保護の停止
を経ることなく直ちに保護を廃止する必要性・緊急性及び保護の廃止がもた
らす被保護世帯の生活の困窮の程度に関する事情を、十分に考慮せず(ある
いは不当に軽視して)されたというほかなく、その結果、社会通念に照らし
著しく妥当を欠くものとなっているから、裁量権を逸脱又は濫用したものと
認めるのが相当である

結論
以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、本件処分は、裁量
権の逸脱又は濫用があったものとして取り消されるべきであり、原告の請求は
理由があるから認容することとして、主文のとおり判決する。

生活保護停止処分取消請求事件 平成22年 兵庫県多可郡γ町(現在のβ町)

事案の概要
本件は,生活保護を受給していた原告が,生活保護の決定及び実施に関する
事務を行う処分行政庁から,自宅を売却すること,自動車を処分すること及び
持病治療の受診先を近隣の医療機関とすることを指示されたにもかかわらず,
同指示に違反したことなどを理由として,平成21年9月15日付けで上記生
活保護の停止処分を受けたため,同処分は,生活保護法27条1項に基づく書
面による指導指示が行われていないなど違法な処分であると主張して,その取
消しを求める事案である

施行規則19条によれば,保護の実施機関が保護の変更等をするには,
書面による指導指示が必要である。しかし,本件処分は,書面による指導
指示がないまま行われた。
イ(ア) 同条の趣旨について,被告は,保護の実施機関において,指導指示
の必要性及び内容の検討を慎重ならしめるとともに,指導指示を受けた
被保護者に対し,指導指示の存在及び内容を正確に知らしめることにあ
るとした上で,本件では,処分行政庁において本件処分の決定に至るま
で慎重な検討作業が行われていたこと,原告は,自分に対していかなる
内容の指導指示が行われているのか,当該指導指示に違反した場合どの
ような処分が行われているのかを正確に認識できていたことから,同条
の趣旨は実質的に充足されているというべきであり,本件処分に取り消
しうべき瑕疵があるとはいえない旨主張する。
しかし,かかる主張は採用できない。その理由は以下のとおりである。 

(イ) 法は,憲法25条に規定する理念に基づき,国民に対し,生活の困
窮の程度に応じて必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障すると
ともに,その自立を助長することを目的とし(1条),生活に困窮する
者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度
の生活の維持のために活用することを要件として保護が行われるという
補足性の原則をかかげ(4条),保護は,厚生労働大臣の定める基準に
より測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物
品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとするこ
と(8条1項)など保護の諸原則を定め(第2章),それを前提として,
保護の実施機関は,被保護者に対し,生活の維持,向上その他保護の目
的達成に必要な指導又は指示をすることができ(27条1項),被保護
者はこれに従わなければならず,これに違反したときは,保護の変更等
をすることができるものとする(62条1,3項)。そして,施行規則
19条は,保護の変更等の法的効果をもたらし得る法27条に基づく指
導指示について単に書面によることと定めるだけではなく,書面による
指導指示に従わなかった場合でなければ保護の変更等をすることを禁止
しており,これは,生活保護を受ける権利が生存権に由来する重要な権
利であることに鑑み,法27条に基づく指導指示を間接的に強制する法
62条3項の保護の変更等を実施するための要件として,弁明の機会の
付与(法62条4項)とともに定められたものと解される。そして,第
2の1(3)イないしエの厚生労働省の通達によれば,実務上,法62条3
項に基づく保護の変更等の処分を行うためには,まず口頭による指導指
示を行い,それによっては目的が達成されないと認められた場合に書面
による指導指示が許され,被保護者がかかる指導指示に従わない場合に,
弁明の機会を付与するものとされ,各段階において,被保護者に対して
指導指示の内容を十分に説明すること,及びケース診断会議に諮る等組
織的に十分な検討をすることが求められている。
これらの規定に上記の実務上の運用も併せ考慮すると,法は,法62
条3項に基づく保護の変更等の処分を行う場合において,口頭による指
導指示,書面による指導指示,弁明の機会の付与という段階的な手続を
設け,各段階において,指導指示の内容等に関する慎重な検討を行うと
ともに,被保護者が置かれている状況を明確に理解させて指導指示に従
う機会を与えることで,被保護者の権利保護の要請と指導指示の実効性
の要請との調和を図るものと考えられる。
そうすると,施行規則19条は,被告の主張する趣旨にとどまらず,
被保護者の権利保護を図るための手続的規定と解すべきであるから,そ
の違反は,保護の変更等の取消原因となる瑕疵に当たるというべきであ
る。
ウ そして,本件処分は書面による指導指示を欠いており,9月4日の段階
では,書面による指導指示を行い,期限内に指示事項が守られない場合に
は本件保護を停止する旨,ケース診断会議で確認されたのに,同月7日に
は,担当職員らが,弁明の機会の付与の通知をもって書面による指導を兼
ねることができるものと誤認し,書面による指導指示のないまま,本件誓
約事項の不遵守を理由に本件保護を停止することにして,弁明の機会付与
の手続に至っているのであり,書面による指導指示をしなかったことにつ
いて首肯すべき事情があったとはいい難い。
前記認定事実によれば,本件処分につき慎重な検討作業が行われていた
こと,原告は指導指示に違反した場合にどのような処分が行われるのか正
確に理解していたこと,それにもかかわらず,原告は本件自動車の保有
固執していたことがそれぞれ認められるものの,上記趣旨に照らすと,そ
のことをもって書面による指導指示をしなかったことを正当化できるもの
ではない。
エ したがって,書面による指導指示を欠いてなされた本件処分には,取り
消しうべき瑕疵があるといわざるを得ない。 

結論
以上の次第で,その余の争点について判断するまでもなく,本件処分は違法
であり,原告の請求には理由があるから,これを認容することとして,主文の
とおり判決する。 

この判例は指導指示違反に対する保護停止廃止処分を行う時に、受給者側がそうなることを十分把握した上でも、その過程を福祉事務所が誤って処分した場合は処分は違法となると述べた判例です。

申請権の侵害、辞退届 小倉北自殺事件(福岡地裁小倉支部平成23年3月29日判決)

【事案の内容】
 60代の男性が、入院中の病院で福祉事務所の職員と面談し、その後、複数回にわたり福祉事務所を訪問したが、生活保護申請書を提出するには至らなかった。その後、男性は居宅生活に移行して保護が開始された。しかし、就労を開始すると、福祉事務所に辞退届を提出させられ、その翌日には保護が廃止された。約1か月後、男性は失職したため福祉事務所を訪問したが、当日、その翌日も就労を指導され、申請書を提出する事ができなかった。数日後、男性は自殺した。男性の相続人らは、北九州市に対し、父親が生活保護の受給権を侵害され自殺に追い込まれたとして、(1)男性が福祉事務所や病院で同所職員らと面談した時の調査開始義務違反、保護開始決定義務違反、(2)福祉事務所の職員らの助言・教示義務違反、申請意思確認義務違反、申請援助義務違反、(3)保護廃止処分の違法性などを主張して、国家賠償請求訴訟を提起した。

【問題の所在】
 生活保護の申請に際し、福祉事務所窓口において申請届を受理しないケース(いわゆる「水際作戦」)や一旦、生活保護を開始しても、ケースワーカーが厳しい就労指導の末に辞退届を強要し保護廃止を行うケース(いわゆる「硫黄島作戦」)が問題となる。本件は、これらが常態化していた北九州市の運用の違法性が問われた事案である。

【判断】
 一審判決は、(1)及び(2)について、保護実施機関には「生活保護制度を利用できるかについて相談する者に対し、その状況を把握した上で、利用できる制度の仕組について十分な説明をし、適切な助言を行う助言・教示義務、必要に応じて保護申請の意思の確認の措置を取る申請意思確認義務、申請を援助指導する申請援助義務(助言、確認、援助義務)が存する」とし、福祉事務所の一部の行為(不作為)に助言・確認・援助義務違反を認定し国賠法上違法であるとした。(3)については、辞退届による生活保護の廃止をするには、「被保護者が保護利用を継続することができることを認識した上で、任意かつ真摯に辞退を申し出たといえること」、「被保護者に経済的自立の目途(十分な収入が得られる確実な見込み)があり、保護廃止によって急迫した事態に陥るおそれがないこと」が要件として必要であるとし、本件では、保護廃止は国賠法上違法であるとした。一審で確定。
 行政機関による「申請権侵害」の要件を明確にした点、辞退を勧めて廃止決定を行う行為が違法であることを明確にした点が重要な事例である。

野宿者と居宅保護の原則 佐藤訴訟(大阪高裁平成15年10月23日判決)

【事案の内容】
 原告は、日雇い労働に従事していたが、高齢等により、就労が困難となり、野宿生活に至った。原告は、保護実施機関にアパートでの生活保護の利用を申請した。保護実施機関は、野宿生活者に対しては施設保護しか実施していないとして、原告に対し住宅を確保しての保護利用を認めなかった。原告は、施設保護の処分を不服として審査請求を行った。
 その後、知事は、1年たってもこれに対する裁決をしなかったため、1998年(平成10年)12月2日に、処分の取消しを求めて提訴した。

【問題の所在】
 生活保護法が居宅保護を原則(法第30条1項)としているにもかかわらず、野宿者については、施設への収容保護しか認めない「行政慣行」がある。本件は、この行政慣行の違法性が問われた。

【判断】
 一審判決は、原告の請求を認めた。これに対して、被告が控訴したが、二審判決は、本件について、原告が「居宅保護によることができない」との要件に該当せず、収容保護したのは違法であるとして、被告の控訴を棄却し、原告の請求を認めた。二審で確定。

 

障害者の自動車保有の可否 枚方身体障害者自動車保有事件(大阪地裁平成25年4月19日判決)

【事案の内容】
 生まれつき両股関節全廃の障害を持ち、歩行が困難な原告が、生活保護を受け始めた後、従前から日常生活に通院や日常生活に利用してきた資産価値のない自動車の処分を指示され、これに従わなかったため、指導指示違反を理由に生活保護を廃止された。
 また原告は、保護を廃止されてから約2年後、改めて保護開始の申請を行ったが自動車を処分していないことを理由に却下された。原告は、これらの廃止処分及び却下処分の取り消しとともに、国家賠償法に基づく損害賠償を求めて提訴した。

【問題の所在】
 厚生労働省は、生活用品としての自動車の保有を原則として認めないが、例外として、一定の場合、通勤、通院のための自動車保有を認めている。本件では、障害者である原告の自動車保有の可否が問題となった

【判断】
 一審判決は、自動車の保有について、処分価値がない資産であるからといって当然に保有が認められるものではないが、「処分するよりも保有して活用する方が生活維持及び自立助長に実効性があり、維持費等の経済的支出が社会通念上是認できると認められるような事情があるかという観点からその保有の可否が検討されるべきである」とし、原告が自動車による以外に通院等を行うことは極めて困難であったと認め廃止処分の違法性を認めた。また、国賠法1条1項の違法性を検討し、廃止処分については重大な不利益処分であるにもかかわらず事情聴取等の必要な調査・検討を怠ったとして、職務上の注意義務違反を認めるとともに、再度の申請に対する却下決定についても、保護廃止から約2年の期間があったにもかかわらず、専ら自動車が処分されていないことを理由に漫然と却下したとして注意義務違反を認め、損害賠償請求を認めた。一審で確定。
 なお、原告が通院以外に自動車を使用していたとの被告の反論に対しては、「当該自動車を通院等以外の日常生活上の目的のために利用することは、被保護者の自立助長(同法1条)及びその保有する資産の活用(同法4条1項)という観点から、むしろ当然に認められる」と判示した。

指導指示違反を理由とする保護廃止処分と手続違反 北九州市違法指導指示事件(福岡高裁平成22年5月25日判決)

【事案の内容】
 夫原告は、妻子とともに生活保護を受給してきたところ、福祉事務所は、すでに独立した長男の住所の報告や世帯全員の住所氏名を記入した同意書の提出を指示し、その指示に従わなかったとして、世帯の保護を停止した。
 停止の際、書面による指示、弁明聴取の通知書、処分の通知は、本人らに送達されず、その後、いったん保護は再開された。
 他方、福祉事務所は、妻と三男に就労を指示し、これが履行されていないとして、妻と三男だけにしか弁明の機会を与えなかったにも関わらず、世帯主である夫を名宛人として保護を廃止した。
 原告らは、(1)停止処分の違法性、(2)廃止処分の違法性、をそれぞれ主張するとともに、(3)ケースワーカーの言動を含む福祉事務所の対応に違法があった、として福祉事務所や市に処分の取消し及び無効と損害賠償を求めて提訴した。
 なお、停止処分については、処分から60日以上経過した後に審査請求が申し立てられていたため、審査請求期間の経過の有無も争点となった。

【問題の所在】
 保護の実施期間が被保護者に対して行う指導指示(法第27条)について、被保護者はこれに従う義務があり、義務違反がある場合、実施機関は、保護の変更、停止又は廃止ができる。
 しかし、指導指示違反により生活保護の停・廃止を行うには、文書による指導指示、弁明の機会の付与など厳重な手続きが必要である、本件では、この手続の不備が問題となった。

【判断】
 一審判決は、審査請求の期間内であったことを前提に、「書面による指示」については、法27条1項、62条3項、法施行規則19条が書面による指示を求めている趣旨を確認し、「指示書は確実に被指示者に交付されることが必要であり、その交付がなくても上記各規定に反しないというためには、実施機関が指示書交付のための相応の方策を尽くした事情が認められ、かつ、口頭による指示が十分かつ具体的に行われたことを要する」として、本件における手続違反を認めた。また、「弁明の機会の保障」については、法62条4項による弁明の機会の保障が被保護者の権利保護のために重要であることを確認し、「弁明の機会の保障はできる限り確実に行われなければならず、実施機関はそのための相当の措置を取る必要がある」として、本件において弁明の機会の保障を欠いていたことを認めた。さらに、「書面による処分の通知」については、法26条が書面をもって被保護者に処分を通知すべきことを求めている趣旨を確認し、「書面による通知は、処分後速やかに、できる限り確実に行われなければならず、実施機関は通知書交付のため相当と認められる方策を尽くす必要がある」として、本件では通知規定に反すると認めた。
 前二者は保護停止の処分に重大な影響を及ぼすものであるとして、(1)処分を取り消した。次に、(2)「廃止処分の違法性」については、就労指示の違法性は否定したものの、三男に対する求職指示については「相当性・適切性に問題なしとしない」と評価し、廃止ではなく停止にとどめても「指示事項が履行された可能性もあった」などと指摘して、直ちに保護を廃止したことが著しく相当性を欠き、裁量逸脱の違法があるとして、処分を取り消した。さらに、本件では世帯全員の保護が廃止されたにもかかわらず、妻と三男だけにしか弁明の機会が保障されなかった点についても「世帯員の一部の者の指示違反を理由に保護を廃止する場合、他の世帯員に対しても弁明の機会は与えられなければならない」として、法62条4項違反を認めた。そして、国家賠償請求については、これらの手続違反のうち、停止処分において、「法令の要求する手続きを実行する姿勢が希薄であった」、「職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と処分を行った」として国賠法上の違法性を認め、市に対して、原告らに各33万円の支払いを命じた。

 二審判決は、(1)停止処分について、弁護士を介して通知を受領する以前に原告らが福祉事務所職員とやり取りをしている経過があり、遅くとも原告ら夫婦が福祉事務所を訪れた日には停止処分の存在や内容を了知していたと認定して、審査請求期間の徒過により訴訟要件を欠くものとして訴えを却下した。
 原告らは停止処分について予備的に無効確認を求めていたが、「書面による指示」、「弁明の機会の保障」、「書面による処分の通知」、の各手続きの違反について、それぞれ手続き上の瑕疵があることは認めながら、その瑕疵が処分を無効ならしめるほどの重大かつ明確な瑕疵であるとは認めず、「取消事由となり得ることはあっても、それが無効になるとまではいうことができない」とされた。(2)廃止処分については、廃止処分が原告ら家族に与える影響の重大性等に照らして裁量権の逸脱を認め、(3)国家賠償請求については、福祉事務所の対応につき「保護の停止を急ぐ余り、保護停止という重い不利益処分を行うに当たり、法令が要求した手続保障を蔑ろにするものと言わざるを得ない」として注意義務違反を認め、それぞれ原審の結論が維持された。二審で確定

行政手続法

第一章 総則
(目的等)
第一条この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第四十六条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。
2処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関しこの法律に規定する事項について、他の法律に特別の定めがある場合は、その定めるところによる。

こちらは、役所に生活保護を申請する時に適用される法律です。

(定義)
第二条この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一法令 法律、法律に基づく命令(告示を含む。)、条例及び地方公共団体の執行機関の規則(規程を含む。以下「規則」という。)をいう。
二処分 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。
三申請 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。
四不利益処分 行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。
イ事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分
ロ申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分
ハ名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分
ニ許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるもの
五行政機関次に掲げる機関をいう。
イ法律の規定に基づき内閣に置かれる機関若しくは内閣の所轄の下に置かれる機関、宮内庁内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項若しくは第二項に規定する機関、国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する機関、会計検査院若しくはこれらに置かれる機関又はこれらの機関の職員であって法律上独立に権限を行使することを認められた職員
地方公共団体の機関(議会を除く。)
六行政指導 行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。
七届出 行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいう。
八命令等 内閣又は行政機関が定める次に掲げるものをいう。
イ法律に基づく命令(処分の要件を定める告示を含む。次条第二項において単に「命令」という。)又は規則
ロ審査基準(申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。以下同じ。)
ハ処分基準(不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。以下同じ。)
ニ行政指導指針(同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときにこれらの行政指導に共通してその内容となるべき事項をいう。以下同じ。)

この法律は、「行政書士」の出題範囲の基本的な事項を述べています。

ここでポイントなのは「処分」「不利益処分」「行政指導」「届出」という用語がどうなっているかです。

「行政指導」というのは「処分」にしないので法的拘束力を持たないとこです。

手続き法・発想を逆手にとってこちらもやりたい放題(実践編)

生活保護受給者がケースワーカーに違法な言動を取られた場合の手続きが枯渇しています。

憲法第十七条何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

「審査請求」「国家賠償請求」があるから大丈夫だと思われがちですが、実体としては違法な保護停止がされたときにやっと法テラスが動くレベルで機能しません。

何故なら、ケースワーカーの「指導・指示」には法的拘束力・強制力がないからです。

また、昨今で不正受給に対する罰則が返還しかない!と言われていますが、受給者よりもケースワーカー生活保護法違反が圧倒的に多いのですが、生活保護法にこれといってケースワーカーに対する罰則はありません。

ケースワーカーが必要最小限度の指導に違反したとしても、実質やりたい放題となるのはこのためです。

じゃあ、どうすればよいのか?というわけですが、

これを逆転の発想で考えるなら生活保護受給者は

役所に対して指導指示(クレーム)を入れ放題ということになります。

逆にいえば、受給者側が役所に対して指導を指示を縛る法律はありません。

もちろん、違法しているのは役所側ですので、

ここまで読んだ方ならお分かりですが、憲法生活保護法を守らないケースワーカーには十二分のお灸をすえなければなりません。

ケースワーカー憲法生活保護法にほとんど無知であるため、クレームを入れた瞬間に立場が逆転します。

更に、ケースワーカーは100人以上のケースを抱えている場合が多々あり、1人のためにクレームに対して面談をしたりするのは大変面倒で余計な仕事が増えていきます。

ケースワーカーは所詮福祉のパシリであるため、「上からの指示を受けたからそうした」としか答えられません。

そしたら今度は係長・課長がいちいち対応することになります。

クレームは上司を巻き込んで面倒+恥をかかせられるので、クレーム慣れしている違法福祉事務所はまだしも、基本的にはダメージを抱えます。

ここで注意をしなければならないのは「担当課以外」の窓口に問い合わせることです。

「保護課」以外の総合窓口や人事課、監査課などにクレームを入れて外側からプレッシャーをかけていきます。

ケースワーカーは無視し、指導指示助言もろともには耳を貸さない

・行政解釈都合上、違法な保護停止廃止にする情報を提供しない

・銀行口座を通さない副収入を獲得し収入申告をしない

この記事、法律の記事のはずなんですが、

まず、保護停止が「違法」だってこと分かったと思いますがそれでも強行してくるヤバい福祉事務所があります。

群馬県桐生市より上がいた!本当の無法地帯はここ!生活保護福祉事務所tier表【2024/9/17速報】 - 働いたら負け

↑上記の記事のFランク以上はそのような福祉事務所だという前提で考えてよろしいです↑

ペタペタっとコピペして様々な判例を紹介しましたが、裁判は氷山の一角であり、訴訟を起こして物質的被害がないといけないですから、必ずしも「国家賠償請求」で50~70万獲得できるわけではありません。

弁護士費用分も回収できないとなると、弁護士も引き受けてくれません。

そして、保護停止廃止レベルといった裁量権の逸脱じゃなければ裁判所は関与しない。

こうなるとルールを守るだけ損になります。

司法は皆さまが思っている以上に機能しません。

終わりに

法律は、あくまでもシステムであり、システムの依存は自分の身を滅ぼします。

生活保護法も同様に、というか律儀に守ろうという意識を持てば持つほど自分で自分の首を絞めるパターンが多く存在します。

それは、本文でも述べた通り、裁量権の逸脱が無い限り、裁判所は関与しないという判決が最高裁で出ており、法律をまともに読めない行政が歪んだ解釈を行うためです。

世の中もそうですが、法律というルールは建前で、実質的な実害を考慮し、どのルールを破っても問題がないかということの方が重要です。

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主に、1対1で生活保護や引き籠りについての相談もやってたりします。

困りごとがあったり、同志と集まりたいなど、遠慮なくご連絡ください。

ワイのディスコードID:

satchan1345

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