上級者向けアニメシリーズ。今回は、2020年「pet」です。同時期に「ID:INVANDAD」って非常にわけのわからない設定のアニメがあって、難解枠が2つ重なっていたのも不運だったのですが、これは名作です
最近のアニメですけど、知名度低いですよね
この作品の弱点もあるんですけど、それを差し引いても、ストーリーのレベルは高いので、量産型アニメに飽きた「猛者」は、そろそろ手を出してもいいのかなと思います。難易度は、いままで紹介してきた「魍魎の匣」「狼と香辛料」「AIR」よりかは若干低いかなと思っています。ただ、取っつきにくいっていう部分はある。
petを視聴する前の心構え
petというのは、洗脳型超能力を使って主人公たちが無双するアニメではありません。
ジャンルでいえば「組織・社会への反逆」というストーリー型であり、他のアニメの例をみれば「デカダンス」「サイコパス」「N0.6」「テクノライズ」「クレイモア」「アクダマドライブ」「約束のネバーランド1期」「ファントム」などがあげられます。
既存の組織・社会に疑問を持った主人公が叛逆を起こすか、逃走するかといったテンプレート型です。
なので、「1・2話」は「0話」で、「4話」からが実質「1話」かなと思います。
多くの視聴者は3話までみてわけわからなくなって、4話から、林さんというおっさんが唐突に逃走したり、主人公だと思っていた司(つかさ)が狂い始めたり「結局、このアニメ何がしたいの?」といったような形になり、初見はフェードアウトしやすい形になっております。
人物関係が錯綜していますが、ざっくりいうと、構図ではこうなっています。
ただ、林・ヒロキ・悟っていうのはチームではなくて、個々人の状態です。
petでこれ抑えておけば多分大丈夫という用語
- ヤマ:最も尊く大切な記憶の「場所」
- タニ:最も忌むべき記憶によって作り上げられた「場所」
- カギ:「ヤマ」を「タニ」を使って覆い隠し、感応を鈍くすること
一見難しそうにすすむアニメなのですが、この3つの用語は最低限抑えて置けば、ついていけるのかなと思います。
人の中にある「ヤマ」と「タニ」の片方でも潰してしまうと、記憶の改変や廃人化が起こります。
登場人物たちは、人の「ヤマ」や「タニ」をいじくることができるので、「人間兵器」といってもいいでしょう。
ワイは、上級者向けアニメシリーズの中では、この作品はそんなに難解なことはやってないと思うので、この用語と人物を抑えて置けば、特にメモとかしなくても1クール通してみれるのではないかなと思っております。
各話:講評
第1・2話:面白いが、弱いものいじめ感がぬぐえない
話の設定からして、登場人物たちが「最強」にみえますので、緊迫感もなければキャラクターに愛着も湧きにくい序盤。
とりあえず、面白いんですけど、こういった流れがずっと続くのは嫌だなと思うかもしれません。
この「pet」というアニメは「4話」から実質「1話」のような形になっていますので、1~3話というのは「設定の説明回」となります。
第3話:アニメ化失敗の要因。圧倒的「ミスリード」
petがアニメとしてとっつきにくくなっているのは、この第3話かなと個人的には思っております。
1クール通してみた結果としては、原作未読勢からすると「pet」って作品は1話毎にターゲットを潰して話が終わることを淡々とやっていくのかな?というイメージが強くなる回なんですけど、実際、この作品は1クールで人物同士の洗脳合戦がメインでありますので、この第3話というのは、あんまりよくわかない不要な回。
そして、今後に付箋に繋がっていく話でもないので、ただでさえわかりにくいアニメなのに、間違ったリードの仕方をしてしまったかなと思います。
その次の回から「林さん」が登場して、最終話までエピソードが地続きで淡々と進んでいきます。
第4話からが、本編
3話の流れからしても、4話でのターゲットは「林さん?」という風な解釈になっていきますが、この「林さん」は超主要キャラ。
実質ここからが「第1話」です。
だから、3話が1話完結エピソードは視聴者に対して悪いミスリードをとってしまったと思います。
4話から8話くらいまで着々と話が動いていきます。
一旦。登場人物整理
林さん:4話から登場。司と悟のヤマ親で善人
メイメイ:ベビーと呼ばれるキャラ。記憶操作能力者になりうる感応力の高い子供に「ヤマ」のみを分け与え、鍵の作り方を教えないまま能力のみを使えるようにしたもの。自らの記憶と外部との区別がつかないため、周囲とのコミュニケーションが取れない。分け与えられた「ヤマ」を意識しているときのみ、「ヤマ」の中で自我を保っていることができる。このキャラクターが倫理的にどうなんよ?っていうキャラクターで、基本的に「カギ」から教えて育てようとする林さんが何故、メイメイをこのやり方で育てたのかというのも12話で明らかになっていきます。
桂木:1話から登場している下っ端会社員だが会社からしたら、忠実に会社に従う「完璧な社員」。桂木は、一見、意味のないキャラクターにみえるが人格を含めて、林にも利用されたりする、割かし重要なキャラとなる
さぁ、11話から本番。怒涛の洗脳合戦がはじまります
11話全員で悟を潰しにかかる回
司は、ヒロキがメイメイというベビーを作ったことが許せないという正義感で、林さんを潰したことにして、悟にヒロキの記憶を書き換えることによって「かたき討ち」を取ってもらい、その後、悟を潰すという算段をたてる。
会社のメンバー全員で悟を騙しにかかるという回です。
ここで悟が「あの善人である林さんが、メイメイのようにヤマのみを与える育て方に賛成するだろうか?」と疑いをかけます。
そこで、証拠として、「桂木」のいじった記憶を悟にみせて悟を信じ込ませる。
「場所」に行き来できる人間のみが信じられる証拠を利用して騙しにかかる渾身の回です。
緊張感満載で非常に面白いと思います
12話による付箋回収 ※ネタバレアリ
petは事実の付箋回収というよりもキャラクターの行動原理の付箋回収となります。
なので、司というキャラクターは、頭はいいはずなのに大事な部分でズレた行動をしているのか、それは「会社に洗脳されているから」というブラック企業を務めたことのある視聴者ならば痛いほど共感できる理由に、納得せざるおえなくなってしまいます。
司が主軸で話が動いていましたが、ここにきて視聴者サイドは、登場人物たちが相当に追い詰められた状況だったんだなと気づかされる展開になります。
13話衝撃の超展開 ※ネタバレアリ
悟「桂木は君のお父さんなんだ」ワイ「は!?」
最終回にて超展開が待ち受けていますが、超展開の理由が解説された時に、キャラクターのこれまでの立ち振る舞いを考えたら、納得せざるおえなくりますよね。
桂木の記憶隠したら人格がクソ野郎になってしまったというのは草
そして、最後は、逃走した末に林さんに分けてもらった「ヤマ」に実際に辿り着く
ラノベ・なろう・少年向け漫画作品というのは、大抵の最終回は強引にハッピーエンドに持っていこうとしますが、この作品はそんな綺麗事で終わらせるのではなく、代償行為もアリながら、最低限の目的は達成できた終わり方。
この物語は終わって、失ったものも大きいけれども、悟とヒロキに新しい生活に対する希望を持たせる。
大衆向けではないかもしれませんけど、ベストな完結の仕方かなと思います。
点数93.85 総合評価 A
3話の大減点、8話まで淡々と話が消化されていく中で11話~13話の畳がけるようなストーリーの終幕。アニメは、基本的に序盤だけ面白くて終盤失速するのがオチなのですが、最後ちゃんと決めてくるアニメというのは、評価していきたい。95点超えたら、推奨作品となりますが、このアニメは興味を持たれた方は是非観てもいいんじゃないかなと思います。
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